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子どもの頃に好きだった本と再会した | 金曜日のひとりごと

この夏、帰省して自分の部屋に入った時に、まっさきに乱雑に置かれていた卒園アルバムが目に入った。

その時、アルバムに載せるために将来の夢を聞かれた記憶が蘇ってきた。ほかの人は順番がくるとすぐに答えていたのに、自分はなにも浮かばない。

「どんどん順番が近づいてくる。どうしよう」とドキドキして、いざ順番がきたら、結局ほかの人が言っていた職業を真似して答えた。

という記憶はあったけど、肝心なその内容を覚えていなかったのでページをめくって探してみた。

わたしの名前の欄に書かれていたのは「かんごふさん」だった。心にもないことを言ったせいか、この目で確認してもまったく記憶になくて笑った。

そして、ふと1つ上の行が気になった。

「ゆかいなゆうびんやさん」

園の貸し出し本ですきなものという項目のようだったが、こちらも記憶になかった。でもページを見渡してもほかに同じタイトルをあげている人はいない。

「きっとこれは本当に好きだったのかも」

そう思うと、どんな本か気になって仕方がなくなった。

後日、地元の大きな本屋さんへ行って、卒園アルバムに書かれていたタイトルで本を検索してみた。

すると、仕掛け絵本の棚に1冊あったのだ。絵がとび出す本なのかなと思って手に取って、パラパラとめくって驚いた。

ゆうびんやさんがさまざまなひとたちに手紙を運ぶのだが、届け先に辿り着くと、次のページは実際の封筒のように袋状になっていて、中にお手紙が入っているのだ。

これは、大人になった今みても心がときめく。

そして最後のページには作者の説明があった。

夫のアランは1938年、妻のジャネットは1944年、共にイギリスに生まれる。ふたりとも教員学校に学び、卒業後アランは小学校の先生となるが、ジャネットはレスター工芸学校にすすむ。そこでグラフィックデザインを学び、本や雑誌のイラストの仕事を数年続けた後、絵本の仕事を始める。処女作は、夫のアランがかいた話に絵をつけた"Brick Street Boys"シリーズ。常に夫婦一緒に仕事をしている。

『ゆかいなゆうびんやさん』 ジャネット&アラン・アールバーグ作/佐野洋子訳|作者について

夫婦一緒に仕事をしているというスタイルにも、とても惹かれるものがあった。

第1刷発行は1987年10月25日で、わたしが生まれる少し前だったけど、2019年2月1日に第72刷発行されていた。小さい頃のわたしだけじゃなく、たくさんの人に愛されてきた絵本なんだと思い、迷わず購入した。

あらためて、じっくり読んでみると、絵本の中の封筒やお手紙は、宛名の書き方、便箋のサイズ、お手紙のたたみ方までそれぞれ違う。手書きの文字で絵が描かれたものもある。どれも本当のお手紙のようだったのだ。

何度読み返しても、新しい発見が細部にあるような絵本。これは、もう一度好きになっちゃったな。

それから、とてもシンプルでわかりやすいのに、あたたかさがある言葉選び、次のページもめくって読みたくなる仕掛けは、今の自分が書きたい文章にも通づるものもあった。

小さな頃のわたしもこの本が好きだったのか、としみじみした。

この本と再会できて良かった。

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