中島らも『ガダラの豚』を読んでたら朝になった

 なんか面白い本は無いかなー、と適当にGoogleで「小説 面白い」と検索して出てきた「小説好きが選んだ夜更かし小説Top○○」みたいなブログ記事を開き、これまた適当に目についたガダラの豚をAmazon Kindleで購入し、そんなに面白いもんかねーと斜に構えつつ読み始めたら、いつの間にか朝になっていた。

 タイトルだけは知りつつも中身については全く知らなかったので、「こんな面白い内容ならもっと早く教えてくれれば良かったのに」と虚空へ向かって吐き出してしまった。誰かが自分に教えてくれる義理など無いのだが。

 タイトルからは想像できないのだが、ガダラの豚は呪術戦を主軸にした話だ。最初は日本の新興宗教から始まり、後半はアフリカ編へと移る。敵がこちら側へ呪術的な攻撃を仕掛けてくるので、こちらも呪術や論理でもって対抗する。そんな話である。

 呪術による形而上学的な戦闘以外にも肉弾戦によるバトル展開もある。メインは呪術なのだが定期的に身体を使って戦いもする。このアクションシーンも面白い。表紙やタイトルや導入から想像されるよりも、百倍はエンターテイメントしているので「面白いもんが読みてー」って時には素直にオススメできる。

 ガダラの豚は導入シーンがネックになっている気がする。主人公が登場し本編が始まる前に、修験者的な老人が登場し護摩をするシーンから始まる。ここがとっつきにくい。好きな人は好きかもしれないが、仏教だかの専門用語が多発し、登場人物にも馴染みがない。後になってみればこの導入もとても良いものに感じられるが、初見で読み始めると面食らうかもしれない。いきなり老人の護摩修行から始まるとか本当に面白いのかこの本、と自分は面食らった。

 でもその後は特に難しい用語が出てくるわけでもなく、スルスルと読み進めていける。魅力的な人物が登場しては事件に巻き込まれる。中島らもらしく、これまた定期的に薬物も登場する。呪術、暴力、薬物、アフリカ!って感じの小説だ。どれもこれも面白い。

 読み終わった後は「呪術」の概念について考えさせられること請け合いである。どこまでが呪術でどこまでがトリックなのか。どこまでが現実でどこまでが非現実なのか。確固たる物もあれば曖昧であやふやな物もある。エンタメとしてめちゃくちゃ面白いのにどこか白昼夢を見ているような気分になる。それが『ガダラの豚』だった。

 久々に小説を読んで夜を徹したが、やっぱり何回経験してもこれは良い体験だ。「3冊買っちゃったしなぁ、読むかぁ」ではなく「ああ〜1巻の半分くらいで止めるはずが2巻を開く手が止まらねぇ」となってしまう本だ。こういう小説に出会えるなら、Top○○記事から本を選ぶのも”アリ”だなと思った次第。終わり。

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