なぜフランス語を学び始めたのか
フランス語を本格的に勉強する決意をしたのは、初めてソムリエコンクールにチャレンジした時だった。
当時、神戸のホテルレストランのソムリエに着任したばかりだったが、街場のレストランと比べ、勉強できる時間が圧倒的に増えたことで、心のゆとりが生まれた。
しかし、初出場したコンクールで、あっさりと予選敗退。
セミファイナル、ファイナルのステージを観戦していると、課題は、テイスティング、サービス共に、英語、もしくは、フランス語での対応が求められていた。
「すごい。日本のトップレベルのソムリエは、ここまでできなければならないのか。」
まさに井の中の蛙。勉強不足だった自分とのあまりの力の差に、大きな焦りを感じたあの瞬間のことは、今でもリアルに覚えている。
壁を乗り越えるために
「来年、この舞台に立つためには、外国語でテイスティングコメント、さらにはサービスもできなければならない。」
コンクールでは、英語、もしくはフランス語の、どちらかを選択する必要があり、準備段階からどちらかに絞って、その言語の能力を、常に磨いておかなければならない。
私はその時、迷わずフランス語を選択した。
しかし、フランス語でのテイスティングコメントを教えてくれる人は、周りには誰もいない。自分一人で試行錯誤をしながら、コメントを組み立てていくしかなかった。
フランスへ旅した際には、本屋さんで自分に合いそうなフランス語の本を常に探し、ワインクイズの本や、日本の漫画「ソムリエ」が、仏語訳されているものを見つけては購入し、なるべく楽しみながら勉強を継続できる環境を作るように意識した。
フランス語検定も、いきなり3級からチャレンジ。その勢いで準2級まで取得。文法の基礎を学ぶことと、勉強する上での目標を持つことで、モチベーションに繋がった。
短期間ではあるがパリでの留学。その時のホームステイの経験も、「耳」を鍛えるのには、最善の環境だったと言える。
そして、ソムリエコンクールにおいて、テイスティングコメントは、問題なくできるようになり、サービスに関しても、ある程度のレベルまではできるようになってきて、これまでの積み重ねの成果が、徐々に結果に繋がるようになっていった。
フランス語習得のためのおすすめ本 3冊
では突然ですがここで、私がこれまで勉強してきたなかで、最も成果につながったと考えている本を2冊、ご紹介させていただきたいと思います。
まず一つめは、
「旅で磨こう!実践フランス語 NHK出版」
これは、繰り返し何度も読み返していて、文字通り、ボロボロになるまで読み、線を引き、音読をした。
付属の音源も、何度も何度もくり返し聴いて耳で記憶。(古い本なので、今さらCDがついてても、と思われるかもしれませんが…)
中級者向きですが、実際にありそうなシチュエーションを、楽しいストーリー仕立てにして、リズムよく習得できるようになっている。(さらには、文法もわかりやすく、シンプルに解説されています)
たくさんの本を試してみましたが、これに勝るものなし!というほど、基礎力を最も伸ばしてくれた実感があります。
そして次にご紹介させていただきたいのはこちらの本。
「クラウン フランス語単語 ヴェスィエール・ジョルジュ著」
著者のヴェスィエール・ジョルジュさんは、著名なフランス語講師。ワインスクール レコール・デュ・ヴァンの田邉クラスにも通ってくださり、ワインエキスパート試験にも見事に合格されています。
こちらの本は、贔屓目なしにとてもわかりやすく活気的な一冊。単語と文章を同時的にシンプルにインプットできて、非常に読みやすく継続しやすい構成になっています。
中級編もありますので、まずはこちらをしっかりと理解していただき、その後、中級編をご覧いただくと、段階的に確実にレベルアップできます。
そして最後の一冊はこちら。語学勉強の方法を学ぶ上で、衝撃を受けた本。
「古代への情熱 シュリーマン自伝」
この本は語学本ではなく、純粋にシュリーマンの自伝なのですが、ある数節に、あらゆる言語の習得を容易にするとされる真理が記されていて、語学を勉強するものにとっては、大きなヒントになるのは間違いないでしょう。(その中にはやはり、「音読」の重要性が語られている)
この方法に従い、シュリーマンが、新たな言語を次々に習得していくその一連の流れは、読んでいてワクワクしてきます。
ぜひ参考にしてみてください。
なぜフランス語なのか
日本人として比較的なじみのある英語ではなく、なぜフランス語を選んだのか。
言うまでもなく、英語は非常に重要な言語で、現在、最も学ぶ必要性がある言語であるということは、もちろん充分に理解している。(そして少しづつですが勉強もしています。)
しかし、あえてフランス語の勉強を選択した理由は、何よりもその食文化の豊かさに惹かれたこと。
フランス料理の歴史、文化、世界観、もちろんその美味しさ。これらどれもがあまりにも素晴らしく、感動を与えてくれて、そこに欠かすことのできないフランスワインという存在に興味を持ち、さらには、それらを表現するフランス語を好きになっていった。
どんなことにも言えることかもしれないが、まずは、自分が好きだと思えるかが最も重要。
語学の勉強においても、学びを最大化し、充実感を得るためには、「やらなければならないから」よりも、「好きだから」の方を優先するべきであり、結果的にそのマインドが、大きな成果を生みだすと、私は考えています。
ワインディレクター 田邉 公一
最後までご覧いただき、心より感謝いたします🥂