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【SaaS事業を理解する】第1弾: Sansan株式会社

0. はじめに

皆さんこんにちは、たむこうです。簡単に自己紹介させていただくと、私は東京大学の工学系研究科博士課程で某Deep系の研究室に所属し、Deep Learningの金融への応用について研究しつつ、株式会社ACESという会社を経営しております(絶賛採用中です)。

そんな感じなので、昔から企業の決算を見るのは好きでした。今日は、ザ・ SaaSって感じの事業を行っていて、ついに黒字化したことで話題になったSansanの決算を読んでパラパラっと記事に書き起こしてみます。
なお、ウィスキーを飲みまくって書いているので、誤謬や言葉遣いはご容赦ください。

1. 事業内容

法人向けクラウド名刺管理サービスSansanと、個人(or小規模事業者)向け名刺アプリEightがあります。

私の理解でSansanの事業をエレベーターピッチ風にサマリーすると、以下のようになるでしょうか。

【顧客情報を一元管理し営業効率改善】をしたい
【BtoB事業の営業部長】向けの
【法人向けクラウド名刺管理サービス】。
【今までバラバラだった顧客情報をクラウド上で一元管理することができ、部署間のリード共有やクロスセル・アップセルの期待値を向上させる】ことができ、
【他のCRMツール】とは違って
【高精度な名刺読み取り(人のチェック含む)により顧客情報のデータ化がシンプルで、人事異動なども反映した最新の情報が他のCRM/SFAツールとAPI連携できる】という利点がある。

Sansanは事業規模100人以上の中企業~大企業をターゲットとし、Eightは個人(or小規模事業者)向けをターゲットとした事業の区分けと展開をしています。

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Sansanは所謂toB向けのSaaSビジネスモデルに対して、EightはどちらかというとtoCアプリケーションのビジネスモデルに近い感じになるでしょう。
Sansanは企業一つ一つに営業(インサイドセールスなどを含む)を行い導入を進めていくのに対して、Eightはマス向けにCMを打って、顧客を獲得し、基本的にはコストのかかる営業は行わない方針なのでしょう。
SansanをtoB向けのSaaS企業として評価する場合に、上記の理由や、Eightの年間売上が全体の売上の10%に満たないことを考えると、時価総額へのインパクトはSansanの成長がほぼ全てと認識するべきだと思います。

2. PL分析: 概要

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https://ir.corp-sansan.com/ja/ir/news/auto_20200714462227/pdfFile.pdf
より

まず、目に付くのが営業利益が黒字化したことですね。コンサバティブな投資家・マーケットは、黒字化をとても(過大に)評価する傾向にあるため、ひとまず良い決算だったのではないかと思います。あれですね、最初から善良な人が善良な行いをするよりも、不良が改心して善良な人間になった方が評価が高くなるって感じです。
まあ、基本的には株価はだいたい予想のついていることは折込済みですので、決算の翌日は少し上げましたが、そこまでサプライズって感じでもなかったようです。

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3. PL分析: 売上増加要因の分解とLTV増加率

さて、次に目が行くのは売上高の増加が前年同期比+30.9%という数値ですね。Sansan事業単体で見たときは、ストック売上高成長率+29.6%ですので、40%ルールを鑑みても、悪くない成長率であると評価できます。

そして、SaaSビジネスの売上成長としては、
1. 顧客数増加
2. 顧客単価増加
3. 解約率低下
の3つに要素分解することができます。

決算説明資料では5年前との比較で成長を強調しているスライドもありますが、1年前との比較をすれば、以下のような感じです。

1. 顧客数増加: 5823=>6754, +15.9%
2. 顧客単価増加: 156,000円=>161,000円,  +3.2%
3. 解約率低下: 0.68%=>0.60%, -0.08%

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以上の数値から、LTVの増加率を計算してみます。

LTV = ARPU / churn rate

ですから、

LTV(previous) = 156,000円/0.68% = 22,941,176円
LTV(now) = 161,000円/0.60% = 26,833,333円

LTVは16.9%増加していることがわかります。

契約件数は+16.0%なので、
1.16*1.169=1.356...
と売上インパクトで言うと実態としては+35.6%くらいの成長率だと認識できますね。

契約数を伸ばすことは、マーケティング・セールスに資金投下すればある程度可能ですが、これだけのLTVの成長を実現できていると言うことは、優れたプロダクトであることを意味しますし、実態のLTV成長率に対して売上高成長は遅れて反映されますので、今後売上高も想定を上回る成長を見せてくれるのではないかと期待します。

4. PL分析: コスト構造と顧客獲得単価 

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次にコスト構造と顧客獲得単価を見てみます。

売上原価は、基本的に
- ファックスみたいな読み取り機のハードウェア代(減価償却?)
- サーバー代
がほとんどでしょう。そしてこれらの販管費は、契約者数に比例すると考えられます。そのため、LTVの増加率はほぼそのまま営業利益の増加になると考えて良さそうです。

次に、人件費を見てみましょう。ここで大事なのは、営業部門の人件費です。単純に考えれば、


顧客獲得単価 = マーケティング+セールス

ですので、SaaS事業の性質を見るためには、営業の人件費を知る必要があります。

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営業部門は全体の3割くらいでしょうか。エンジニアなどの人材が相対的に高単価であることを考えれば、コスト的には営業部門が25%くらいになりそうです。

四半期営業部隊の人件費 = 463百万円 * 25% = 116百万円

そこに四半期広告宣伝費316百万円を足せば、顧客獲得総コストが概算できます。

四半期顧客獲得総コスト = 116+316 = 432百万円

ただし、4Qはコロナ禍にあり広告宣伝費を削減して調整した可能性が多大にあります。実際、昨年の四半期広告宣伝費は594百万円ですし、コロナがなければ広告宣伝費を削減する意味・理由もありませんので、実際としては、四半期広告宣伝費として、700百万円くらいをみておくのが良さそうですね。また、BtoBのSaaS事業では、だいたい3~6ヶ月リード期間がありますので、そういった観点も含めて、

四半期顧客獲得総コスト(推定) = 116+700 ≒ 800百万円

くらいが妥当だと思います。

そして、四半期での契約件数の増加
3Q: 6587=>4Q: 6754で+167件ですので、

CAC(顧客獲得コスト) = 800百万円/167 = 4.79百万円

といったところでしょう。

5. PL分析: LTV/CAC分析

Sansanの粗利がざっくり85%だとすれば、netのLTVは

net LTV = 26,833,333円*0.85 = 22,808,333円

ですので、

LTV/CAC = 22,808,333円/4,790,000円 = 4.76

となります。LTV/CAC > 3であることが良いSaaS事業と言われている中で、非常に優れたパフォーマンスと言えるでしょう。

6. Sansanの競合優位性は?

Sansanの競合優位性として、決算説明資料では

1. 名刺画像の自動解析と入力のテクノロジー
2. 圧倒的な市場シェアと顧客基盤

が語られています。

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1. 名刺画像の自動解析と入力のテクノロジー
については、優れたOCR技術もさることながら、名刺に特化してデータを集めて、人手のチェックを含めたアノテーションを行い、AIに学習させるデータを貯め続けていると言う点において、確かに他の会社の追随を許さないと認識して良いでしょう。(AIのために人が働く時代が到来していますね、、、w)

2. 圧倒的な市場シェアと顧客基盤
についても、間違いないMoat(モート, 競合優位性)です。名刺管理アプリといえばSansanといったブランディングもできており、認知という点からすれば競合はほぼいないでしょう。さらに、たまった顧客データは、API連携などを含めて、今後データが蓄積すればするほど更なる資産化が期待できます。

7. コロナによるSansanの事業への影響は?

コロナの影響はSansanに対しても小さくないはずです。特に、「そもそも名刺使わない」とうクリティカルな変化が先んじて起こる可能性があります。

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決算説明資料では、読み取り名刺枚数が回復しているというデータがありますし、確かに新規顧客の獲得においては、まだまだ対面での営業の重要度が高いので、そう簡単には「名刺」という文化はなくならないとみていますが、コロナによって引き起こされる価値観の変化は見過ごせません。

そうした中で、Sansanも「オンライン名刺交換」というソリューションを早速展開開始しました。(流石のスピード感)

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一方で、こうなってくると
1. 名刺画像の自動解析と入力のテクノロジー
という強み・参入障壁は失われてしまいます。

さらにいえば、オンライン名刺だとしたら「名刺」でなくても、FacebookとかSNSでいいよね?という根本的な疑念も湧いてきます。オンライン名刺交換という文化をいかに浸透させるかということが、今後の勝負になってきそうです。

8. コロナ禍における成長戦略は?

オンライン名刺も面白い&今の課題に刺さっていますが、足元で見れば、今まで蓄積してきた顧客データを武器に、API連携機能やCRM/決済連携によって、データの資産化によるアップセル・クロスセルを狙っていく形になるでしょう。(というか決算説明資料よくみたらそのまんま書いてあった)

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一方で、今までは「名刺」が顧客接点であったけれども、今後インサイドセールスの普及なども伴って、名刺に囚われない新しい顧客接点・データを構築していく必要もあると思います。
現貯金も1,300億円くらいあり、黒字化もできているので、某ヒラメ筋のインサイドセールスの会社とかM&Aとかしたら面白そうだと個人的には思っています。(あの会社、なかなかchurn rateが高そうで、Sansanのノウハウとか適用したら強そう(コナミ))

9. 今後の株価は?

現在(2020-08-13)Sansanの株価は1,560億円です。「SaaSの時価総額は、ARR(年間売上)の10倍が妥当~」みたいな風説がありますが、それでいうと1360億円くらいのARRなので、+10%くらいの評価/ブレといったところでしょうか。

しかし、

- LTVが+35.6%で成長しており、今後もCRM連携などで更なるLTV増加が期待でき、それらの成長は売上高/営業利益にまだ反映されていないこと
- LTV/CACが4.76と、一般的なSaaSに比べても高いパフォーマンスであり、営業利益率はある程度コントロール可能な状態になっていること
- 明確な競合優位性があり、日本でNo.1の地位はしばらく堅いこと

といったことから、

- 3年で売上2倍、営業利益2倍は期待できる
- LTVの成長は、売上高や営業利益に反映されるのに時間がかかり、マーケットの想定よりも高いパフォーマンスとなる可能性がある

と予想でき、株価は上に行きそうだと思っています。

(あくまでウィスキーを呑みまくっている状態の個人の意見であり、投資は自己責任でお願いします)

最後に

何が言いたいかっていうと、絶賛採用中です。

よろしくお願いしますー

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ACES,inc. CEO/東大松尾研究室修士/ 投資(日本株、仮想通貨)/サッカー(バルサ)/夢はポケモンマスター/ポーカー koichirotamura.com