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天皇誕生日

本日、天皇誕生日に際して、皇居にて行われている一般参賀へ足を運んだ。天候は生憎の小雨で、気温が低い上、風が非常に冷たかった為、外套を着込んでの参列となった。午前十時半過ぎに宮殿のベランダに天皇家と秋篠宮家一同が現れ、天皇自ら参加者にお言葉を述べた所、日本人のみならず外国人を含む大勢の参賀者が祝福の意を込めて手旗を一斉に振り、祝いの一場となった。戦前・戦中を彷彿とさせるような熱烈な空気感は無く、一度、参賀者の右手側で万歳の声が上がったものの、声はまばらで、流石に現代の日本人はかつての様に一色に染まりはしない事に安堵感を憶え、私は会場を後にした。大手門を抜け、日本橋丸善へ向かう道中、大日本愛国党の街宣車が静かに皇居へ向かって走り去ってゆくのを目にした。明治憲法と現行憲法との間には著しい差異があるが、前者は上から押し付けられた「物語」であり、彼ら右翼が、時の流れと共に雲散霧消する宿命にある「物語」の中を未だに虚しく生きているのを見て、私は昭和天皇が崩御しても尚、平成から令和初頭の長きに渡り、この国を蝕んでいた「昭和の虚像」が既に砕け散った事を実感するに至った。
丸善の一階で新刊書の棚を眺めていたが、特段食指が動かず、仕方なしにNHKが毎月発行している「まいにちロシア語」のテキストを立ち読みした後、自宅に帰った。ひんやりと冷たい空気漂う自室にて、先日購読を開始した日本経済新聞の朝刊を広げると、日経平均株価が最高値を更新したとの見出しが目に入ったが、金融機関勤めが長く、投機目的の投資が社則上禁じられていた為、私は今、株式市場の狂騒と無縁の世界にいるという事をまざまざと感じ、苦笑を禁じえなかった。

皇居・宮殿前の参賀者たち


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