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Россия в Токио

ウクライナ戦争が開戦してから間もなく二年を迎える。日本国は欧米と足並みを合わせ、ウクライナ支援を続けている状況であるが、この間、十年来のロシア語学習者である私は、東京都内でロシア関連の小売店や飲食店を巡り、ロシアやウクライナ、旧ソ構成国の人々の現況を自らの出来得る範囲で見聞きしていた。
新宿の名店スンガリーへ二年前の夏と昨年の春に二度足を運んだが、戦争の勃発を受け、ウクライナ料理のコースを提供していた。神保町のろしあ亭には昨年の閉店前に伺ったが、以前と特段の変わりなかった。またサラファンも同様で、客足は絶えず活気があった。六本木のバイカルへも五年ぶりに訪店し、コース料理を堪能したが、今更ではあるが、店の側の準備を思うに、予約をした方が良かったと思う。新しい店では目黒のAnna's Kitchenにて、ロシア料理だけではなく、ジョージア(グルジア)やウズベキスタンの伝統的料理に舌鼓を打ち、戦争の最中ではあるが、東京に居ればコーカサスや中央アジアの文化へ容易に触れられる恩恵がある事を実感した。
小売店では、銀座の赤の広場へと向かい、マトリョーシカの他、お茶や菓子類をいくつか購入したのであるが、店主曰く、ロシアからの輸入が途絶えており、アルメニア等の東欧諸国からの輸入品が大半であるとの事であった。
日本国内にいると、遥かに上の世代がロシアに対して旧ソ連時代の印象を引き摺っており、ロシア語を学んでいるだけでも奇妙な目で見られる事が皆無ではないが、一九九一年を以って、ロシアは共産圏ではなくなっており、一九一七年より資本主義諸国と一線を画して行われていた数々の社会実験は最早、昔話の域を出ない。
別段、神頼みという訳ではないが、先日、ウクライナ戦争の終結を祈り、御茶ノ水の東京復活大聖堂へと足を運んだ。落ち着いた設えの聖堂の中、蝋燭の煌々とした光を浴びたイコンを前に、どういう訳か、生まれ故郷の田園が脳裏に浮かんだ。
ロシア大統領選挙が来月の半ばに行われるが、戦時下にプーチン政権が倒れれば、戦争の早期解決へ確実に繋がる。一見、強権的に映るが、民主主義国である事には変わりなく、権力の交代は選挙によって実現可能である故、選挙を目前に控え、大統領プーチンは怯えている。

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