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○日本語教育・日本語教育学評論

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日本語教育と日本語教育学などで折々に感じたことを発信しています。
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2022年7月の記事一覧

Conform to the norm、つまり、「規範(正しく適切とされていること)に準じる」に注目するばかりでよいか

以下、Twitterの他の人へのレスの足し算です。  昨日の大会での議論でもそうだったけど、そもそも、言語の理解ってなんだ? 産出(運用?)ってなんだ?などを考えてほしい。また、昨日の習熟の議論は、conform to the norm、つまり、「規範(正しく適切とされていること)に準じる」という観点ばかりで論じられている。お笑い芸人は日本語熟達者!?  「まずはconform to the normが必要!」と言う人がいる。昨日も柔道の型などの話が出ていた。日本語教育に

日本語教育研究者と日本語教育の実践 ─ 研究で培われた「鋭敏な目」から洞察を

 この数日でTwitterで上のようなテーマとなる発信をしましたので、まとめます。 *便宜のために番号を付けました。ぜひ、おもしろいと思ったの、レスください。 1. 日本語教育に関心を寄せる研究も「研究」なのだから、研究者が「研究」として、「役に立つ」とか「役に立たない」とかは考える必要はなく、自立的・自律的にやればいい!? それだと、日本語教育が研究者の「ダシにされる」ような! そして、そんな傾向は以前から感じている。 2. 一方で、それまで長く日本語教育に従事していた

日本語習熟論学会に参加して

facebookに3つ記事を書いたので、シェアします。 Ⅰ. 言語習熟論学会(2021年にできた新しい学会)の第1回年次大会に参加中。午前中のシンポジウム「習熟論の必要性・可能性」が終わりました。全体の感想などは「省略」して、聞きながら考えたこと。 「日本語教育に従事して知識・技能と思考力・判断力・表現力等について考えること ─ 日本語教育と国語教育における日本語の習熟を考えるために」(以下のメモのタイトルです。) 1.仮の用語の定義 (1) 言語知識・言語技能を包括

「太平洋戦争を『言葉』で戦った男たち」(映像の世紀バタフライエフェクト)を見て — 続き

 先の記事の「続き」のようなもの。  ムックと池田先生と上間に特に注目しました。そこには、「高貴なスピリット」というものが感じられます。  先の記事で紹介したようにムックはエール大学ロースクール出身で弁護士資格もすでに有していたスーパーエリートです。アイビーリーグ、中でもハーバードやエールやプリンストンは「良家のご子息」(当時は、女子学生もいないわけではありませんが、圧倒的に男子でした。)しか行けないスーパーエリート大学でした。そして、その多くの学生たちは国を超えた「高貴な

強い興味・関心主導の日本語習得

 この記事はごく簡潔に書きます。 1.表現活動の日本語教育と強い興味・関心主導の日本語習得  先に書いた表現活動の日本語教育における日本語習得の仕方(記事:日本語を「教える」ことの70-8-%は…)は、いわば「整えた形で教育を企画して実践する」というパラダイムでの日本語習得の仕方となります。それとは、大きく異なって、強い興味・関心主導の日本語習得とそれを促進する日本語教育というのも「ITが進んだ現在」では実行可能です。  その方法は、その名の通り、日本関係のいろいろな事象(ア

日本語を「教える」ことの70−80%は話題という「桶」に言葉遣いという「水」を溜めること

 今はほとんど見られなくなりましたが、夏の打ち水というのをご存じでしょうか。下の写真のように、夏の昼間の暑さをやわらげるために日が陰ってから家の前の道に水をまくことです。で、日本語の習得をこの打ち水に譬えたいと思います。 1.表現活動の日本語教育あるいは自己表現の日本語教育  文型・文法を中心として適宜に語彙も加えながら教えていくというやり方ではなかなか日本語が上達していかないというのは、日本語の先生の多くが共有している認識だと思います。筆者は、そうした方法の代替案として表