見出し画像

東京でアートディレクターになった経緯

普段は、自分から過去の経験談を話すタイプではないのですが、せっかくなので、思い出しながら、初めてそれを文章で書いてみようと思います。

見つけてしまった小さな募集記事

大学を卒業して、もっとデザインの勉強をしたいと思い、ロンドンへの留学の準備をしている最中、たまたまその時期に発売されたデザイン誌「アイデア」を買いました。そこで特集されていたWieden & Kennedy(ワイデン アンド ケネディ)が制作した「ナイキのビジュアル・クリエイティブ」に衝撃を受け、日本の広告と海外の広告のクオリティの差に愕然としました。そして、各ページを最後までじっくりと読み続けていくと、最後のページの左下にとっても小さくこんなことが書いてありました。

「Let's contact with Wieden & Kennedy」
Wieden & Kennedyは 、意欲的でオリジナリティ溢れる才能を常に求めている。自らのクリエイティブに自信を持ち、さらなる可能性を求めているクリエイター(デザイナーに限らずコピーライターも)は、自らの手でチャンスへの扉をたたいてみることをお薦めする。まずは自身のポートフォリオとプロフィールを下記まで送ってみることだ。(電話でのコンタクトは不可)。あくまでも真剣であることが第一条件。

アイデア 268 特大号[全面特集] ナイキのヴィジュアル・クリエイティブ

広告には全く興味がなかったのですが(むしろ日本の広告が嫌いだった)、「ここ(Wieden & Kennedy)凄げぇ」と思って、とりあえず何も考えずに勢いのまま自身のポートフォリオをWieden & Kennedyに送りました。

運命的なタイミング

ポートフォリオを送って2週間ほど経ち、とくに連絡もなかったので、気持ちを切り替えて留学の準備を進めようと思い、大きなスーツケースを買いに福岡の天神まで行きました。(当時は大学を卒業して一時的に八女の実家にいた)そしてスーツケースを選んで購入しようとしたその時です。携帯電話が鳴りました。電話に出ると、英語なまりの日本語を話す女性の人からでした。そう、なんとWieden & Kennedyから連絡がきたのです。どういう感じで応答したかは全く覚えていませんが、この言葉だけ言われたのを覚えています。

一度、東京のオフィスに遊びに来ませんか?

遊びに来てってなんだろう?と思いながらも、もちろん、後日、スタスタと東京のオフィスに行きました。丸の内のオフィスに着くと、まだ東京オフィスを立ち上げて間もなかったようで、3人くらいの日本人らしき人と、2人の外国人がいました。当時のWieden & Kennedyのクリエイティブ・ディレクターだったラリー・フライ氏と、通訳をしてくれるリツさんという方とカフェでお茶をすることになり、どんな話をするのだろうと思っていたら、「今度、〇〇の仕事をするから一緒にやらないか?」というような内容でした。(たしかVOGUE NIPPONのコンペの仕事だった)
マジでびっくりでした。緊張していたのもあって、分かりやすく興奮した記憶はないのですが、心の中では相当ガッツポーズだったと思います。留学のことなんかすっかり忘れて即答で入社することを決めました。

というより、やっぱりアメリカの会社は違うなと思いました。だって、当時の僕は、東京や海外の一流美大を卒業したわけでもなく、福岡の大学を卒業したばかりの22歳、仕事も未経験、しかも英語も話せない。つまり単純に作品だけで選んでくれたのです。ちなみにその時とってくれたホテルは、「フォーシーズンズホテル椿山荘」。福岡の22歳の小僧のために、もう訳が分かりませんでした、、、

というわけで、それから約3ヶ月後にW+K東京に入社することになるのですが、入社当初は本当に大変でした。オフィスは赤坂に移転し本格的に始動し始めていて、アメリカ本社からも新しいスタッフが数名来ていました。アメリカから来たスタッフは当然英語で話すし、日本人も帰国子女もしくはバリバリの海外留学経験者なので、英語を話せないのは僕だけという環境です。英語が聞き取れるようになるまで3ヶ月ほどかかりました。それからは簡単な英単語でなんとか7年間のりきりました。

もう25年も前の話です。
こんなに昔のことを思い出しながら振り返ったのは今日が初めてです。



インスタにも作品など掲載しています。フォローよろしくお願いします。

▼Instagram
https://www.instagram.com/_koichi_inoue_/

▼Instagram (MOLGRAF)
https://www.instagram.com/molgraf/

▼Twitter
https://twitter.com/InoueKoichi

▼ORYEL
http://oryel.jp/

ORYEL
168-0071 東京都杉並区高井戸西1-33-12
富士見ヶ丘センタービル206
Tel: 03-6304-6301

この記事が参加している募集

自己紹介