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【diary 25】2023/08/17(木)

静岡での大雨のせいで、東京行きの新幹線が新大阪止まりになったのは、まさに予想外でした。Uターンラッシュのさなかのダイヤ乱れによる混乱は一日続きそうでした。その日に関東に戻ることは早々に諦めて、大阪で一泊することにしました。幸い、大阪駅から徒歩8分のところに新しくできたホテルを安く確保することができました。

晩御飯を食べ、子供二人を寝かした後、一人で街を歩いてみました。大阪駅周辺、特に歩道を渡って隣の阪急梅田駅周辺は、大学時代にほぼ毎日を過ごした街です。目を閉じれば頭の中で街中を空中散歩ができるほど、迷宮と呼ばれる地下街を含めて、隅々まで知り尽くしていました。しかし、大学卒業とともに大阪を離れてはや十数年。街の様子は変わり、僕の記憶もかすんでいました。

それでも、僕がアルバイトをしていた、阪急梅田駅の中二階にある成城石井というスーパーを含めて、駅周辺は当時の面影を色濃く残していました。老舗の喫茶店のコーヒーの匂い、安くておいしくて何度も食べたあんぱんの味、徹夜明けの友人たちとの語らい、アルバイト先でのトラブルなど、当時の日常が鮮明に脳裏に浮かびます。しかし、僕が親しみを感じたその場所に、あのとき時間を共にした人々はもういません。懐かしい、けれども人もお店もやはり昔とは変わってしまった街を歩きながら、「ずいぶん遠くまで来た」と思いました。いつの間にか頬を伝っていた涙を、通り沿いのお店で仲間と楽しそうに過ごしている人々に見られぬように、慌ててぬぐいました。

大阪での4年間は、山口の片田舎の実家から飛び出してきた僕に、それまで知らなかった自由とまったく新しい経験をもたらしてくれました。この日、この街と再び向き合い、その変遷を目の当たりにすることで、過去と現在が交錯するような感覚を得ました。その不思議な感覚の中で、改めて自分自身との再会を果たすことができたような気がしました。

人々が楽しそうに過ごす居酒屋の灯りの中、私は涙を拭き、再び子供たちが待つホテルへと戻りました。夜空に向かって、明日は関東に戻れるといいなぁと独り言ちながら。

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