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勉強するとはどういう事か

こんにちは、ミネソタより、コーイチがお届けします。
今回は、教育に携わるものであれば「必ず知っておかなければならない」と僕が思うことについてお話しします。
教育に携わるもの、それはつまり全員ということになります。なぜなら、教える行為は学校や塾の先生だけではなく、誰しも部下や後輩に教える機会、子供に教える機会、そして自分自身を教育していく機会(勉強してスキルを身につけていく過程)があるからです。

勉強するとはどういう事か

知っておかなければならないこと、それは「勉強するとはどういう事」かです。
勉強するとはどういう事か、パッと自分の答えが言える人は、きっと勉強がうまくできる人です。
パッと答えられない人は、おめでとうございます、のびしろ満載ということです。僕は全然パッと答えられませんでした(笑)。でも今では、一つの自分の答えがあります。

勉強するとは何をする事か、それはつまり、「より世界を理解できるように努力すること」です。

「理解ができない」って、すごく悔しい状況ではないでしょうか。
世の中の事を、少しでも多く理解できたら、すごく豊かな人生を送ることができると思います。
つまり、理解力は人生の豊かさ、充実に関わってきます。

例えば…

英語が理解できたら…。日本語だけだと世界70億分の1億人の意見しか聞けませんが、英語さえできれば、大体どこの国に行ってもコミュニケーションが取れます。インターネットの中でも、日本語の情報は多くても全体のほんの数%にすぎないと言われています。

どうしてロシアとウクライナで戦争が始まったのか?それはその国や地域の成り立ち、文化などを知っていないと理解できないですよね。

美術館に絵画を見に来てみた!でも何でこの絵が描かれたのだろうか。作者の生い立ち、時代背景、作品のテーマ。その裏にあることを知ると、もう一回見たくなったりしますね。

美味しいものが食べたい!ではどこに行けば食べられるのか?どう調べたら良いのか?どんな食材が使われているのか?家でも同じように作れるか?

…思いつくあらゆる事柄に、「理解」というステップがあることがわかります。これこそ見える世界の”解像度を高める”と言うことです。

逆に、「理解できないもの」というのは恐怖や嫌悪感・不快感を抱くことがありますよね。
あの人何考えてるかわからない!数学全然わからない!食品添加物って安全なのか?こういう感覚が誰にでもあります。つまり、人間は無意識のうちに、あらゆるものを理解しておきたい、と思っているわけです。

理解するということを通して、我々は人間らしく、豊かな生活を送ることができると言えます。
勉強とは、そのような”理解できる世界の範囲”を少しずつ広げていくという営みなのです。

よーしじゃあ早速勉強だ!と意気込む方や、面倒だなと思う方、いろいろだと思いますが、
この勉強するという行為はお察しの通り、簡単なことではありません。
そして実は単に理解するというだけでは、まだまだ足りないのです。

なぜなら”理解する”ということと”それを実際に使いこなす”までには、いくつかのレベルが存在しているからです。

ブルームの6分類法

「あ〜、理解しました。わかりましたわかりました。はいはい。」
何かを相手に伝えたとして、それを本当にわかってくれたのか?一体どのくらいちゃんと理解しているのか?って怪しんだ経験、怪しまれた経験、誰にでもあるはずです。

人が物事を理解したり、技術を習得したり、学んだことを実際に使えるようにしていくには、実は複数の段階を踏んでいく必要があります。
読みました、書きました、はい完璧に覚えました、というわけにはいきません。

勉強をするにあたって、ブルームの6分類法というものを知っておくと、勉強の進め方が大きく効率的になります。”知識が身につく”と言うことがどう言うことか、そのステップを分解してご紹介します(元の分類から少し改変したものです。末尾に参考資料を載せておきます)。

下に行くほど難易度が上がっていきます。

【記憶】:あることを暗記していて、だいたい思い出すことができる段階。到達目標:知識を正確に暗記する

【理解】:暗記した知識を用いて、それに関連した事柄を理解することができる段階。
到達目標:知識を自由に思い出せる

【応用】:ある問題を、適切な知識を使って解決することができる段階。
到達目標:暗記した知識が何に使えるか知る

【分析】:ある複雑な問題を、いくつかの部分に分解することができる段階
到達目標:いくつかの知識を関連付ける・それらの階層構造を考えられる・問題の構造を把握できるようになる

【評価】:評価基準を用いて、問題を評価することができる段階。
到達目標:評価基準を作り出す・概念や問題から評価の対象となる値を取り出すことができる

【創造】:新しいものを作り出したり、いくつかを組み合わせて別の新しいものを作り出すことができる段階。
到達目標:既知の概念や新しい概念を細分化、階層構造化する・異なる概念の持つ部分を組み合わせる


例えば実生活でどんな感じにこの段階が現れて来るかというと…

記憶:飛行機という乗り物がある
理解:空から聞こえる音を聞いて飛行機だと気付ける
応用:移動手段として飛行機を利用する
分析:旅程、飛行機のチケット購入、準備、などなど
評価:必要額や日程やサービスを加味して複数の航空会社と比較するなど
創造:飛行機を利用したツアーを企画する、ビジネスを考えるなど

どんどん高等になって行くことがわかると思います。
創造まで辿り着ければ、一つの職業にもなりますね。

この分類は実生活にも影響する

ベースとなる記憶があり、さらに理解するというのは、それを自由に思い出せる状態にしておくことです。
そして実際にそれを使うという応用ができて、その細かいステップを考えることができる分析ができるようになります。

学校の勉強や受験勉強で必要になるのは、ほぼこの最初の4つまでです。
数学であれば、公式を覚える、問題を見てどの公式を使うかわかる、実際に公式を使って問題を解ける、複雑な問題の中でもどのように公式を使っていくか考えることができる。

この中で、どのステップでつまずいているかを意識して確認すると、自分が勉強して伸ばすべき箇所が明確になります。

これらはピラミッドのように積み上げ型になっていて、まず知識として物事を記憶して行くというのが全てのベースになります。つまずいているステップがあれば、そのひとつ下のステップを固めて行くということになります。

そこまでできれば、与えられた”答えのある問題”に対しては答えることができるようになっていきます。


問題はここからです。評価、創造のステップです。
大学生以上、あるいは社会人になると、ここからのステップが急に求められることになります。
理解している、利用することができる、というだけでは足りないのです。

飛行機の例で言えば、実際にお財布事情を加味して利用する前に他社と比較したり、時間を間に合うように設定したり。搭乗には時間がかかるから何分前に行って、何時に起きて…など、付随してくる出来事がたくさんある中で、ひとつひとつ実行しているわけです。

つまり社会では、実はかなりハイレベルなことが要求されていて、みんなそれを乗り越えているのです。
ある程度の問題を乗り越える力(最初の4つ:記憶、理解、応用、分析まで)というのは、義務教育の過程や日常生活の中で自然にトレーニングを積んでいて、ほとんどの人がすでに身につけているのです。

しかしながら、なかなか義務教育や高校では身につけることができないステップが評価と創造です。それは学校では教えないから、というか、教えることが非常に難しいか、できないからです。なぜ教えるのが難しいかというと、答えが無いことが多いからです。
時に見よう見まねで、時に自分で工夫して、ひとりひとりが獲得していく能力が、最後の評価と創造のステップなのです。

ここまでで、勉強というものが単に学校の座学に止まらないことを感じていただけたでしょうか。学びの場は学校だけでは無いのです。
一方で学校での勉強の基礎が、大いに人生に関わっているということもわかると思います。

新しい技術を身につけたいとき、成長したいときは、自分が今どの段階にあるのか、振り返ってみることが大事です。
世界は諸行無常の理があります。時代は常に移り変わっているので、まさに人生は常に、学びの連続なのです。この人生を豊かに、充実して生き抜くためにも、知っておくべきことは、「勉強するとはどう言うことか」「知識が身につくステップ」なのです。

あとがき

というわけで、「勉強するとは・理解するとは」知っておくべきこと、についてお話をさせていただきました。

理解するということを通して、人生が豊かになりますし、そういう世界を広げることこそ、勉強するということなのです。そしてその理解には段階があることを意識すると、よりモノの見え方が明確になります。というお話でした。

だからこそ、逆に理解を超えたところから来るもの(初めて目にするもの、予想を裏切られる展開のドラマ、手品、超常現象や都市伝説、など)にワクワクとしたような興味が湧くわけです。

もし全然理解ができなくて、今は面白くないと感じている物事がある場合、それはもしかしたら自分にとって一番面白いものである可能性すらあるのです。

ほんのちょっと興味があるものからで大丈夫なので、まずはそれについて調べてみること、今日から一緒にやっていきましょう‼︎


参考資料

受験勉強が捗らない皆さんへ:第一回(2022年9月9日閲覧)
https://www.sidaiigakubu.com/examination-measure/hakadoranai/

学びを定着させる学習環境の作り方:ブルームのタキソノミーとは?(2022年9月9日閲覧)
https://www.katsuiku-academy.org/media/learning-environment-2/

David R. Krathwohl (2002) A Revision of Bloom's Taxonomy: An Overview, Theory Into Practice, 41:4, 212-218, DOI: 10.1207/s15430421tip4104_2

僕は権限がなく閲覧できませんでしたが、ブルームの6分類法に関するオリジナルの文献は下記です。
Bloom, B. S. (1956). Taxonomy of educational objectives: the classification of educational goals; Handbook I: Cognitive domain. In M. D. Engelhart, E. J. Furst, W. H. Hill, & D. R. Krathwohl (Eds.), Taxonomy of educational objectives: the classification of educational goals; Handbook I: Cognitive domain. New York: David McKay.

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