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「私は前から歯が痛い。でもギリギリ我慢ができなくなるまで歯医者には行かない。それでも私は前から虫歯だ」〜英国難民認定官の言葉


歯医者になかなか行かなくても前から虫歯だ

5年半くらい前(2016年11月)にイギリスとニュージーランドの難民認定業務に携わる認定官のお話を聞く機会がありました。

そこで、聞いた印象的な言葉が、タイトルに引用したものです。

「私は前から歯が痛い。ずっと妻には歯医者に行けと言われ続けている。でもギリギリ我慢ができなくなるまで歯医者には行かない。それでも私は前から虫歯だ」

これは、難民申請が遅れたということと、その人が難民かどうかということは無関係であり、むしろ、人は痛みを感じていても切羽詰まって我慢できなくなるまでは行動を起こさないということを表現したものでした。絶妙な比喩だと思いました。

難民申請者は出身国で官憲によって迫害をされたり、あるいは政府以外の主体による迫害について政府からは満足な保護を受けられなかったために、官憲に対する嫌悪感・不信感があり、できれば関わりたくないという心情であるのがむしろ普通です。とりわけ、外国で言葉の通じない役人へ助けを求めるのに心理的な障害があるのは当たり前で、難民として認定されていなくても、一応安全に暮らして行ければ様子を見て一日一日を過ごしていければ十分でしょう。

それが、入管に摘発され、退去強制令書が発付されるなどして、迫害を受ける恐怖のある本国への送還が現実的なものとなってから難民申請をするのは、虫歯が痛み出して我慢できなくなってから歯医者に行くのと同じです。何ら不自然ではないどころか、むしろ自然な行動とすらいえます。

シリア難民認定率100%でないのを恥ずかしげに話した英国認定官

このイギリスの難民認定官、シリア出身の難民認定率は86%とか(数字はうろ覚え)言った後に、若干慌て気味で、いや、シリア出身といっても本人がそう言っているだけで違う人もいるので、と弁解っぽく話していたのも印象的でした。当時のシリア情勢からして100%近くないのがおかしいと非難されるのを回避しようと思ったでしょう。

平成23(2011)年から平成25(2013)年までの間、日本では既済の34件中難民認定したのは0件でした。

与党議員からもこんな質問がされる始末でした。

国際社会ではスウェーデンが、シリアの国内情勢がああいう状況ですので、シリアからの難民申請は100%受け入れると表明していると聞いておりますし、他の先進諸国においても、現在のシリア情勢に鑑みて、同国からの申請者が数多く、実際、難民として認定されているという情報があります。日本で、難民認定がゼロというのは、なぜでしょうか。



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