【読書日記】世界の取扱説明書 ジャック・アタリ

自分が大学生の頃、一番心に残った本は何だろう?を考えてみた時に幾つかの本が浮かび上がる。
・「ネクストソサエティ」ドラッカー
・「アースリング」
・「仕事の思想」田坂広志
・「21世紀の歴史」ジャックアタリ
・「モーリー先生と火曜日」ミッチ・アルボム
・「東大生はバカになったか」立花隆

etc・・・

今振り返ると大学生というモラトリアム期間での一冊の本との出会いは人生レベルで大きな影響を与えるなとつくづく感じます。

僕は今代官山の辺りに住んでいて、いつも本屋さんを散策するのが日課です。ほんの表紙やタイトルにある何気ない言葉を0.1秒ほどの短い時間だけ目にした時に、パッと足を止め、それを手に取るとなんとも言えない出会いというかご縁を感じる本と出会う。まさに本が一人の人間として人格を持っているかのよう。大勢の中に知り合いがいるとパッと目を止めて振り返ってしまったり、街中の雑音の中、お気に入りの曲が流れてくるとそれを耳が反応してしまうように、数多ある情報の海の中からそれだけに集中して反応するこの身体の不思議というのはご縁でしかないな〜と感じます。

いつも本屋さんで仕事をしていると尿意に見舞われ急いでトイレの方に向かう時にまさかのこの「運命の出会い」がありました。

棚に飾られている本にはそれはそれは大きな、そして一人の歳を重ねた老人の顔写真が印刷されていました。彼の目は僕だけをみている可能ような微笑みと余裕がある表情でこちらをみていて、一瞬あれだけ行きたかったトイレを忘れてしまうような時空が歪んだ瞬間がありました。それは体感覚でとても長く、10分ぐらいあったような気がします。

その時に手に取った運命の本が


「世界の取扱説明書」ジャック・アタリ


僕が大学の時にとても衝撃を受けた本「21世紀の歴史」を書いた著者の新作だった。大学の時この本を読んで一番の感動は

「今は必ず未来から見たら歴史である。であるならば、一度未来にワープして今というのをどのような歴史として語られているか。その視点で今の世界を見て、今から見たらちょっと先の未来(=遠い未来から見た最近の歴史)を本に歴史書として書いてみよう」

というようなコンセプト。これにはホント衝撃を受けて一気に線を弾きながら読んだ記憶がある。

その新刊であり、著者らしい「取扱説明書」というこれまたスケール感の大きい、そして深さを持って洞察する彼にしか書けない視点の本だ!と思い、速攻購入!!

今日はそれについて話していきたいと思います。

あくまでも内容の要約ではなく、そこに書かれている内容を読んで思ったこと。自分が考えた、そして今考えていること(それは正解がまだ見えてなく、整理整頓ができていないこと)を記していこうと思う。

この知の探究を通して自分の中にある真我を目覚めさせていく一年にしたいと思います〜

ということで本題。

今回の本から得られた感想としてまず一番初めに思ったのは
「著者の地球に対しての強烈な信念と不平等への問題視」が印象に残りました。本の内容はネタバレにもなってしまうのと要約チャンネルなどが数多ある中で、僕がわざわざまとめる必要はないと思うので、強烈に思った部分をメモ書き程度に残しておくと。。。

世界は思ったよりも平等へとシフトしている。
所得と資産は違うが、所得の平等化は進んだが、資産の不平等化はますます広がっている。
そしてそれはヨーロッパは西欧の国々は改善されているが、アフリカ特にサハラ地帯よりも南の貧困がひどい地域ほど不平等になっているということ。

→僕はこの事実が非常に印象的でした。まず、植民地支配をしている欧州の国ほど、富める人間が富を独占しているようなイメージがあったから。特にアメリカなんかはトップ5%がアメリカの富の50%を保有しているなどいろんなニュースで見ているから。でも僕はそれはトマピケティが言うところの「R>g」という方程式で示されるような、資産を持つ人間はそれが複利で広がり、時給労働者の賃金上昇率を遥かに超えるからだと理解していました。しかし、そのような環境下に置かれている国々は少なくとも「時給労働者」が存在していて、一定数「資産にも投資できる一般の人」がいる社会。でもこの本で目の当たりにした本当の格差課題というのは民主主義的な統治システムが構築されてすらない国々の人達、つまり多民族で構築され、西洋の都合で経度と緯度で国境を決められてしまった(自分がその国に所属していることすら知るまでに時間がかった人たち)国民で構成されているGDPが低い国が最も不平等が強いられてしまっているということでした。
このような不平等国家というのは独占的な政治体制と、慢性的な既得権益の構造が作られてしまい、非常に所得と資産の偏りが激しいということでした。

でもそこには絶望と同時に希望があり、北欧のスエーデンが経験したように(スエーデンはつい100年前まではトップクラスの不平等の国だった)政治体制が変わることで地球上最も平等性の高い国家に生まれ変わることもできるということも書かれていました。

僕はこれまでスエーデンやノルウェー、デンマークなどはどのビジネス書でも平等と福祉先進国として紹介されいたので、元々の国民性がそうさせていると当たり前に思っていたのですが、実はつい近年までは真逆にいたという事実を知って驚きました。言われてみれば日本も同じように、江戸時代まではおそらく非常に富の偏りが激しい国家だったと思います。それが文明開化で廃藩置県が行われ、藩のトップが自ら退くことを混乱少なく20年で実行してしまった民族。スカンディナビア半島に位置する北欧3カ国も似た超な立地で大陸と接する機会も少なく、外から入ってくる流れを自国でしっかり熟成しながらシフトチェンジできたんだと思うんです。確かにこの大陸が同じで隣国との設置面積が大きい国、(スペイン、ポルトガル、オランダ、フランス、ドイツなど)は意識が外に向き、ライバル視をしてしまうが故の文化の融合統合がしにくい。友達が着てる服と同じ服を着たくないように笑
でも遠く誰も見たことがない国で起こっていることを伝聞で聞いて、それのいいところをいち早く取り入れていいものを作ろう!と自国内だけの市場が成熟されている国は、新しいものを取り入れたり、成熟市場が故の希少性を追い求めて新たな技術、文化を吸収することにインセンティブが働く気がするんです。この孤立性の強い国の変化のスピードと、敵国、ライバル国に囲まれた国の異文化への抵抗というのはその国の未来を大きく変えてしまうんだなとつくづく感じました。

今一人当たりGDPが日本を抜いた韓国も、シンガポールも、イスラエルなど小さく、ピポット力が高い国が近年成長しているようにも思います。

もう少し小さな視点で見ても、教育業界にいればライバルの会社に目を取られてしまう。けど本当のイノベーションはダブレットの普及であり、A I教育プログラムの普及であり、全く違う分野から起こっている。それに目を開き、心を開き取り入れようとする姿勢が今後の10年を大きく変えてしまう。

この本から再確認できたことしては

人類の進化は「異文化との融合力とピポット力」

によって決まるということ。

国レベルでも、企業レベルでのもちろん個人レベルでも言えるのではと思います。

3年前から自分の全く興味がない分野と接していくことが大切だなと思いその分野に熱狂している人を見つけて1年間その分野についてどっぷり連れまわしてもらうということを毎年しています。
・2020年→自分の事業の外にいる実業家と接する
・2021年→神事、神社など信仰と接する
・2022年→アートと接する
・2023年→食を極めたり、その分野の人と接する

2024年は??今年はどんなテーマをしようかな〜

と考え中。


そして話をグッと戻して最後にもう一つだけ!

この本から今まで全くなかった視点として、これから不平等自体が貧困を起こしていただけだが、「地球温暖化」がテーマになってきた昨今、温室効果ガスの排出量が人類全体のテーマになり、それを削減していかないといけない時代に入ったということ。そしてそれこそが次の時代の不平等を生むということ。地球を持続可能にするために削減目標=責任を割り振らないといけない。それを割り振るためには超富裕層だけが「プライベートジェット」「プライベートクルーズ」を乗り回している。そこにどう課税していくか。これが大きなテーマになるということでした。
なるほど!確かに個人が所有する一定の資産が大きな人類全体のマイナスになるものを作り出している。それによるマイナスを埋めるために所有していない人たちの税金を使うというのはどうなのか?ということなんだと思います。この排出に課税をするという考え方は非常に新しいなと思いました。

地球という全体を見た時に適切な環境に対しての税金の仕組みはこれから人類が構築していかなければいけない大きなテーマだなと思った一方、不平等が時代とともに
「所得」→「資産」→「消費・排出」
に変わってきているな〜と感じ、
それに合わせて

「所得税」→「資産課税」→「消費税・排出税」
が出てくるのは当たり前か!と納得した読書でした。

まだまだ書きたいことたくさんあるんですが、今日はこの辺で!今日もいい1日を!

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