知ってる!環境のこと(第59話)

⁂データや内容は、当時のものとなりますので、ご理解ください。
 
こんにちは、いかがお過ごしでしょうか?1ヶ月お休みを頂きましたが、今回のテーマは、「Innovation for Community」です。これは、チェンマイ大学の美術学部、経営学部、社会学研究所の3つの機関が協力し、煙害防止のためのに立ち上げたプロジェクトのコンセプトです。その名の通り、従来の考え方を払拭する新しいアイデアで、環境問題への取り組みを提案しています。さて、どこが新しいのでしょうか?
 
大学の社会貢献
「野焼きをなくすため、廃棄物に付加価値をつけよう!」っと、名づけられたプロジェクトは、地域にある資源をいかし、ゴミの減量、野焼きの減少による煙害の軽減はもちろん、地域住民の所得向上を目指すもので、2007年10月から翌2008年9月までを第1期として行われ、現在プロジェクトは第2期目に入っています。プロジェクトの年間予算は300万バーツで、チェンマイ大学が全面的にサポートしており、大学の社会貢献活動の一環とも捉えることができます。
 
「Innovation for Community」~最強の組み合わせ~
イノベーションとは、新しいアイデア(方法・手法)や革新、新機軸、新技術等に訳されますが、ここでは、「利益を生み出すこと」という条件がつけ加えられています。「Innovation for Community」とは、住民が参加して、地域を良い方向へ導き(問題を解決する)、利潤を生む新しいアイデア と定義されています。また、ここでの新しいアイデアとは、非常事態や緊急事態をチャンスと捉える発想の転換と一般に、環境問題を解決できるなど、誰も想像しなかったメンバーのコラボレーションと位置づけられ、ものの美しさ、そしてそれを造り出すことのみを追求してきた芸術家、物の価値を最大限に生かし、最大の利益を上げることのみを追求してきた経営学者、いわゆる弱者を救う社会問題の解決のみに邁進してきた社会学者がスクラムを組み、市民活動を支援する形となっています。さらに、サポートする側は勿論、活動の担い手となる住民グループでも、女性が中心になるという、本来「ミスマッチ」と考えられていた組み合わせを「最強の組み合わせ」であると提案しているところが、「新しいアイデア」であり、「新しい試み」です。
 
チェンマイ県内の3地区が参加
実際の商品の製作は、野焼きの被害を訴える声が高いことや肺ガンを患う住民の割合が高いこと、製品に転化できそうな廃棄物があること、地域の活動を牽引する健全な住民組織があること等、いくつかの条件を満たしたチェンマイ県内の3地区の市民グループ(温暖化防止グループ向日葵:チェンマイ市内シーウィチャイ地区、ウェーンデン村公害防止グループ:バンドン郡バーンウェン行政区、サラピー行政区婦人グループ:サラピー郡サラピー行政区)が、1年目のプロジェクトサイトに選ばれました。
 
プロダクト
クラフトの生産は、各地にある本来捨てられていた原料を利用することで、ゴミの減量や野焼きの減少に貢献していることは勿論、製品自身が、モダンで実用的なデザインとなっており、「単なるリサイクル活動ではない」ところも「新しい」といえるでしょう。
 
サラピー行政区婦人グループ
①草のかご・・・草刈で出た草を乾燥させ、編み込まれたかごで、非常に軽いのが特徴。
②はぎれクッション・・・仕立て屋から出たはぎれと発砲スチロールで作ったクッション。
温暖化防止グループ向日葵
①器と果物かご・・・古新聞と網戸の修理屋から出る古網戸を利用。動物の形をした果物かごが目を引く。
ウェーンデン村公害防止グループ
①植木鉢・・・木工製品作りが盛んな同地域からでる大量のおが屑を利用して成形。非常に軽く、意外と長く使えるのが特徴。
 
デザインや製品製作の分野で美術学部が、製品のマーケティングで経営学部が、住民への野焼き防止啓蒙活動や環境技術分野で社会学研究所が、それぞれパイロットプロジェクトとして参加する住民の活動をサポートし、各地のゴミの減量や野焼きの減少は勿論、住民たちの所得向上にも一定の成果を挙げているようです。2年目は、チェンマイ県内の3郡(サラピー郡、メーリム郡、ドイサケット郡)より、4つの地域が参加しています。今後は、参加した住民グループが中心となり、「新しいアイデア」の水平展開ができるがどうかが課題となりますが、今後の動きに注目です。

CHAOちゃ~お ちょっとディープな北タイ情報誌
(毎月2回10・25日発行)2009年6月25日第149号掲載

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