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学生だけの部活が強くなるには

強豪校と呼ばれる大学を除き、多くの大学はコーチなどの専門スタッフがいない部活動が多い。また監督という立場がいたとしても他大学との交流や大会出場における責任者という位置づけで、実質学生のみで活動しているケースが多いと認識している。

こういった部活では、強力な選手が入部すればそこから数年は成績が良いが、それ以降はまた元通り、ということが多いのではないか。

そこで、そういった部活が強くなるには、ということを少し考えてみた。


まず、「強い部活」とはなにか色々議論になると思われるが、ここでは競技力が大きく向上できる部活(水泳で言えばタイムを伸ばすことができる部活)と定義する。

次に「競技力が向上するにはどんな要素が必要か」であるが、これはパフォーマンスピラミッドをベースに考えていきたい。

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パフォーマンスピラミッドは通常は上記図の4層目(Position)までで語られるが、今回はもっと大前提となる5層目(Condition)を追加してみた。4層目が「”ヒトとして”正常な身体の動きが部位ごとにできること」であれば、5層目は「”生物として”活動するための健全な状態」を指すといったところ。


次にパフォーマンスピラミッドの各層で必要な機能を水泳部を例に整理した(競技によって層ごとの重みは変わるかもしれないが、機能としては概ね変わらないかと思われる)

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各層ごとにバラバラに強化すると不具合が発生しうるため、全体方針を策定し管理するような機能も必要と考える(もっともここはすでに幹部代がコントロールしていると思われるが)

これらの機能を充足するに当たっていくつかの課題が存在すると考える。

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まず、幹部代が各トレーニングにおける方針を策定するケースが一般的と思われる。その場合、基本的に単年での計画になる。中長期的な方針を謳っても次の代がそれを踏襲するとは限らない(私自身の学生時代の経験ベースで言うと前後の代はあまり好意的な関係ではなく、前年度の施策はなかなか継続されないことが多い)。また、前年度の結果を踏まえたとしても、それ以前の計画や結果までは振り返らないことが多いと考えている。

次に、各機能を高い品質で提供するには高い専門性を必要とする。強豪校では水泳の競技コーチやトレーナーという専門職が専門分野ごとに分担して担っている。とうてい1人ですべての領域を学べるレベルではない。また、専門職の方のように体系的に学ぶには学校生活や競技自体に割く時間を考えると厳しい

最後に、部員は何れ卒業してしまうため、せっかく学んだことも残る代に継承されず喪失してしまうことが多い。もちろん、会話やアドバイスベースで上級生から下級生へと伝達されることはあれど、資産として活用できるような状況ではないだろう。

こういった課題を解決するには、専門チームの体制とナレッジベースの確立が必要だと考える。


まずは専門チームについて。

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競技テクニックや、スイムトレーニング、陸上トレーニングといった括りで機能を提供する専門集団を構成する。1人の部員が全領域をつまみ食いするのではなく、集中的に学習することで、より深く正確な知識や考え方を身に着け、それをもとに経験を積むことで、高い品質での機能提供を実現する狙いである。

また、各チームは、各学年で構成するのがよい。上級生が下級生の学習をサポートすることはもちろんであるが、1年次から経験を積むことで過去の実績を踏まえた計画策定や、中長期的な計画とその実行を可能にすることが狙い。


次に、ナレッジベース。

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各チームで獲得した知識や経験は明文化して残しておくことが必要だと考える。後世のメンバーが、自身と同じ学習プロセスを辿ることは全く進歩がない。その競技や各大学ごとの環境に必要な情報、優先度の高い情報が分かるように残しておくことで、より効率的に学習を進められることが狙い。

このナレッジベースは、専門スタッフの脳に替わるものになるので、登録される内容の正確性や鮮度が重要である。一般人向けの雑誌のように、嘘かホントかわからないような情報が登録されていたら、間違った方向に進んでしまうか、ナレッジベースは参照されなくなってしまう。

そこでナレッジベースを健全に保つための運用はしっかり設計しておきたい

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具体的には、投稿時の承認プロセスと定期的な棚卸しプロセス。投稿時は、例えば記事内容の正確性や体裁、分類やタグ付けの的確さ、重複した情報が登録されていないかなどを見るべきだろう。棚卸しの際には、新しいエビデンスによって古くなった削除すべき情報がないか、低評価・低参照数の記事については内容の修正が必要化削除すべきかの検討が必要であろう。


今回はここまで。単なる箱を作る箱に過ぎないので、実際にはこれを実行するには各チームが自律的に活動することが必要条件となる。そのための動機づけだったり、そもそもこの体制と取組みが単年で終わらず継続されるように目的を説明し理解を得ることが必要となるだろう。

「自分だけが結果を出せれば良い」と考える人が多ければ、決して成り立つことのない仕組みだから、いちばん大切なのは組織風土なのかもしれない。

組織論などを専門にしている人からすればペラペラな内容かもしれないけれど、こんなところで一旦終わり。

色々と議論が必要な点があると思うので、参考程度にとどめて頂ければ。

以上。

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