【短歌】 連作『海鳴り』



シャンプーを詰め替えるとき浴室に満ちる香りで海を弔う


コインランドリーの夜は夜のまま痩せて薄刃うすばのような静けさ


浴槽の湯が冷めるまで反芻は止まず ゆるしには手順がある


どの顔も覚えていない 騙すとき頬粘膜きょうねんまくは湾の内側


揺れているコンテナヤードのの中で息継ぎをするときの海鳴り


うしお 錆 生活のため偽っていたことがある コンクリート


帰る日の塩でただれた国道のバス停のバスだけが紫


人混みが最小単位ずつ分かれ朝は無限の秩序を孕む


燃やされたはずの手紙を読みながら十二月ごとすり減ってゆく


手のひらに刺さる卵殻らんかく真砂まさごになるまで握る では、また明日



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