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Chocolate tastes like home.

私にとってチョコレートは『おふくろの味』だ。


母が幼い頃によくお菓子を作ってくれた、というわけではないのだが、
私が中学生になったころから、わりと名の知れた地元の銘菓ブランドの喫茶室で、パート勤務をしていた。
自宅の仏壇にはいつも、母が職場から持ち帰る残り物の菓子が置いてあった。
私が産まれてからずっと専業主婦だった母、久しぶりのパート勤務は苦労も多かったと思う。

ある日、何故だったかは覚えていないのだが、母がいつも仕事の時に持ち歩いていたバッグの中に、一枚の写真を見つけた。
写っていたのは、のちに母が勤める喫茶室で、身体に対して明らかに大きなイスとテーブルに座り、片手にしっかりフォークを持って、ほとんど目線の高さにあるチョコレートケーキを頬張っている、小さな私だった。

「甘いものをあげたら、お行儀良く食べてたんだよねぇ」

母は懐かしそうに笑った。


思えば、小さな頃からずっと、母がくれるチョコレートは特別だったのかもしれない。
子どもから大人になる過程で、周囲に嫌いなものが増えそうな時期に、母がくれるチョコレートはずっと「好きなもの」でいてくれる、そんな存在だった。

真っ赤なパッケージの板チョコレートに、小さな三角形をしたいちご味のチョコレート、今でも私がスーパーやコンビニで何気なく手に取るチョコレートは、全部母が好きなチョコレートだ。


今日は2月14日。
私が結婚してから、よほど気が合うのか、
私よりも私の妻とばかり連絡を取り合っている母から、久しぶりにLINEが届いた。
使い慣れていないふざけたスタンプと、帰り道のコンビニで使える、チョコレートの引換券だった。


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