【短編】地球担当SE・神と呼ばれちゃう
彼が構築したシミュレーション。「地球」。
最近はずいぶん安定してきた。生態系も落ち着いている。
あまりにも強く貪欲な肉食獣や、有害すぎる菌。そういったものが出現するたびにアラートに悩まされたが。最近は発生回数も減ってきた。
アリが大量に発生した地域に、アリクイを作って配置した時には、
「少々短絡的ではないか」
と上司に窘められたが、あれだって上手く行ってるし、デザインも評判がいいのだ。
懸案であった人類も・・・まぁ、彼らの出現は少々意外ではあったが・・・今のところ、なかなか面白い変数となっている。
その日も何気なく地球をモニターしていると、厳かな音楽が聞こえてきた。
調べたところ、驚くべきことに!彼ら被創造物が、創造主の存在を何となく認識し、讃えてくれているらしい。
これまで人類の行動はあまり気に留めていなかったが、何気なく聞いたその音楽や儀式の美しさに見とれた。彼らが精いっぱい考え、自分へ捧げてくれていると思うと嬉しかった。
(万物の創造主にして全知全能の神・・・か。ふふ)
SEの彼は嬉しくて、この賛歌を歌う集団をマークすることにした。
誰もほめてくれない。そんな自分を、シミュレーションの中のか弱い生物が彼らなりに頼って祈っている。何ともかわいいものだ。
人間に興味を持ったSEは、その後も様々な集団を調べていく。
流派は色々あるものの、多くの民族は神を持っている。彼らは様々な名で自分を呼び、願いを言う。
中には多神教の集団もいる。恐らく複数のSEが関与した他プロジェクトの設定が残っているのかも知れない。それはそれで興味深く楽しい。彼らは彼らの考えたカテゴリーのエンジニアを神とし、貢物や祈りをささげている。美しいなぁ。癒されるなぁ。
などと、彼らの神は、当面癒されているだけであった。
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