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『演技と身体』

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東西の哲学、解剖学、脳神経学、古典芸能(能)の身体技法や芸論を参照しながら独自の演技論を展開しています。実践の場としてのワークショップも並行して実施していきますので、そちらも是非… もっと読む
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#集合的無意識

『演技と身体』Vol.42 無意識の話⑩ まとめ

『演技と身体』Vol.42 無意識の話⑩ まとめ

無意識の話⑩ まとめ全10回に渡って無意識についての考えを述べてきたが、僕自身も無意識の領域を専門的に勉強しているわけではないので、今後実践を通してさらに探っていきたいところである。
最後に全体のまとめを述べておこう。

諸行無常=無意識も自己も変化し続ける

意識的な動作は反復によって無意識化し、逆に無意識の動作はエラーが起こった時などに意識化されるのであった。このように、普通ものごとは意識と無

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『演技と身体』Vol.39 無意識の話⑦ 「私ではなく、私でなくもない」

『演技と身体』Vol.39 無意識の話⑦ 「私ではなく、私でなくもない」

無意識の話⑦ 「私ではなく、私でなくもない」前回までは言語の仕組みを手がかりにして無意識の働きについて考察したが、今回は、そもそも言語構造外について考えることができるのかということをテーマにしてみたい。

自他の区別のない世界

簡単におさらいしておくと、無意識は個人的無意識と集合的無意識の二層構造になっているのであった。Vol.35無意識の話③で説明した通り、個人的無意識というのは個人の脳の働き

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『演技と身体』Vol.36 無意識の話④ 「忘我」と「恍惚」

『演技と身体』Vol.36 無意識の話④ 「忘我」と「恍惚」

無意識の話④ 「忘我」と「恍惚」前回は無意識に、個人的無意識と集合的無意識の二種類があることを説明し、演技における「忘我」、「恍惚」の状態がそれらに対応するものであることをほのめかして終わった。今回はその続きである。

個人的無意識と超個人的無意識

「忘我」・「恍惚」とは、演技において無意識が表面化した状態を二種類に分けて僕が名付けた呼び方であり、無意識の二つの状態に対応する。
無意識の二つの状

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『演技と身体』Vol.35 無意識の話③ 心と無意識

『演技と身体』Vol.35 無意識の話③ 心と無意識

無意識の話③ 心と無意識前回までは、無意識を動作との関連の中で考えたが今回からは、心の働きにおける無意識について考えていきたい。
(なお、今回の記事を書くにあたって主に参照しているのは中沢新一『レンマ学』である。)

なぜ無意識なのか

まず、役者として無意識の問題と向き合うべき理由について述べておこう。
一つには、無意識は心の働きの大部分を占めるものであり、感情を表現するに当たって決して無視でき

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