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真夏の週末興行。アメリカで注目のインディ映画7選

今週のmofiは海の日でお休み。ということで、この「はみだしコラム」で全米の週末興行をおさらいしつつ、現在アメリカで公開中の注目のインディ映画たちを紹介。大作映画だけではない「スペシャリティ」作品カテゴリーで、北米映画の層の厚さに触れます。

『劇場版ポケットモンスター みんなの物語』に、『ジュラシック・ワールド/炎の王国』。日本の海の日の連休は大作が目白押しだったようですね。

一方の北米では、マーベル/ディズニーの『アントマン&ワスプ』が2週目でも2位に食い込む一方、ソニーの『モンスター・ホテル』シリーズ3作目が家族人気を集めて初登場1位を記録。

同じく初登場だった、ドウェイン・ジョンソン主演の90年代アクション映画のオマージュ作『Skyscraper(原題)』は、興行の「超高層」へはたどり着けず3位止まり。不発のようです。

7月第2週目の北米週末興行の結果は、こちらで読めます:


真夏のアメリカで公開中のインディ映画たち

さて、週末興行といえば。

数字のケタが異なるためランキングには登場しない、粒ぞろいの独立系映画が、いま興行で健闘しています。日本での公開が決まっていないものばかりですし、公開された頃には熱を失っている映画もあるかもしれません。

でも、いずれも要チェックな作品ばかりですから、一作ずつ予告を眺めながらチェックしてみるのも一興です。そこで現在アメリカで公開中の、注目のインディ映画たちを紹介することにしました。

ドキュメンタリー作品を含む、計7本。いってみましょう。


1. 『Eighth Grade』

まず、『Eighth Grade(原題)』。近年、上質なインディ映画を製作・配給することで定評を得ているレーベル「A24」より。観客と批評家陣の双方で天井破りの高評価を得ている、瑞々しい成長物語です。8年生、日本で言うところの、中学二年生の少女が抱える悩み多き私生活を描いています。

同作は全米でたった4劇場で公開されたところですが、スクリーン単位での売り上げはこの週末でトップ。1スクリーンあたり$63,071を計上しています。この手の作品では通例の、週を追うごとの拡大公開が待っています。


2.『Sorry to Bother You』

2週目を迎えた、批評家勢お気に入りの怪作コメディ『Sorry to Bother You(原題)』は、こちらも定評あるブランドを築き上げたAnnapurna製作の一本。

1週目は16館のみで公開$1M弱を稼ぐにとどまりましたが、今週は一気に805館へと大拡張。ランキングでも7位までねじ込みました。興行はこれまでに$5.3Mを計上。

『ゲット・アウト』のキース・スタンフィールド、『マイティ・ソー/バトルロイヤル』のテッサ・トンプソンに加え、アーミー・ハマーにダニー・グローバーなども登場していて、コールセンターで働く主人公にまつわる奇々怪々な物語が展開されます。


3.『Don’t Worry, He Won’t Get Far on Foot』

『グッド・ウィル・ハンティング』で知られるガス・ヴァン・サント監督作『Don’t Worry, He Won’t Get Far on Foot(原題)』は、事故で車椅子生活を余儀なくされたアルコール依存症の男の再生を描くドラマ。この作品も、ホアキン・フェニックスを取り巻く俳優陣にジョナ・ヒル、ルーニー・マラ、そしてジャック・ブラックを配していて絢爛。

製作・配給は、インディ・シーンで独自性を発揮するようになったアマゾン・スタジオ。この週末に初週を迎え、4館で公開。$1M弱の興行収入は「悪くない」数字。作品は高く評価されていますから、拡大公開は順調に組まれていくはずです。


4. 『Leave No Trace』(リーブ・ノー・トレース)

『ウィンターズ・ボーン』で孤高の10代の女の子を演じるジェニファー・ローレンスを、一躍スターダムへ押し上げたデブラ・グラニク監督による新作。『Leave No Trace(原題)』は、PTSDを抱えた元米軍兵士と、その父を慕う聡明な娘との絆と苦悩とを描くドラマです。

製作は『パターソン』『キャプテン・ファンタスティック』『ローガン・ラッキー』など、これまた超強力なインディ映画製作レーベルとして知られるBleecker Street。3週目に突入した本作は、北米で計$2Mほどの興行を記録したところ。芳しい数字とは言えないかもしれませんが、年の後半の賞レースでブーストを得る可能性もあるでしょう。


5. 『Won't You Be My Neighbor』

ドキュメンタリー長編の興行も、堅調です。アメリカで子供用の教育番組を根付かせるために尽力した伝説的パーソナリティ、「ミスター・ロジャース」の足跡をたどる『Won't You Be My Neighbor(原題)』は、アメリカで製作されたドキュメンタリーでは今年最大のヒットを記録しています。

6週目の今週は$1.8Mを計上し、のべ$15.8Mを叩き出す異例の好調ぶり。歴代のドキュメンタリー作品のうちでも、興行はトップ20位に入っています。現在16位。教育と倫理のあり方が問われる現代アメリカにとって、真に必要とされている題材だったということでしょう。

ちなみに、ミスター・ロジャースは、「公共放送の教育番組が直面させられた予算削減の危機を、たった5分の陳述で救った張本人』として知られてもいます。

1969年、米連邦が公共放送局への予算削減を検討するにあたり、検討委員会に対してミスター・ロジャースが5分間の演説を行ったわけですね。彼は実に彼らしい、おっとりとした語り口で心に響く演説を打ち、その場で委員会委員長に「削減を取りやめる」ことを宣言させたのでした。その動画はこちらでご覧になれます。

聞いているだけで、泣けてくるスピーチです。

お時間があれば、これだけでもご覧になってください。


6. 『Three Identical Strangers』

同じくドキュメンタリー作品として好評を博しているのは、『Three Identical Strangers(原題)』。三者三様に育てられた三つ子が十代に入ってから初めてお互いを知り、メディアで一躍時の人となった顛末と、そんな兄弟たちが生き別れになった不可解な背景の謎を追うサスペンス調のドキュメンタリーです。

こちらは現在3週目を迎え、167館で$1.2Mを売り上げ。国内で計$2.5Mは、ドキュメンタリーとしては悪い数字ではありません。


7. 『Whitney』

2012年に急逝した歌姫、ホイットニー・ヒューストンの一生を追うドキュメンタリー『Whitney』もまた、好調です。スターダムへとのし上がった彼女の類稀な歌声とは裏腹に、トラブル続きだった私生活の光と闇に注目する同作はRoadside AttractionsとMiramaxによる共同製作作品。

208館で堅調な数字を叩き出し、現在までに$2.6Mを売り上げているのは上々な成績と言えます。ビッグネームを題材にしているだけに、作品自体に冒険心や探究心が見られるわけではないようですが...。改めて彼女の歌を聞くことができるのは、高ポイントと言えるのでしょう。


以上、4本の新作インディ映画と、3本のドキュメンタリー長編を紹介しました。面白そうなものは日本での公開日を待って鑑賞するといいでしょう。

一見、日本との直接的な関心事とは思えない『Won't You Be My Neighbor』が、NHKの教育番組を当たり前のように見て育ってきた日本人の心に新鮮な光を当てるのでは、などと想像しています。

どこかで観られる機会があるといいのですが。


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さて、連休中の私はというと、先週末はアニメエキスポに合わせて来客や会食や打ち合わせが重なり、映画館へなかなか足を運べない日々が続いています。信じられない猛暑に見舞われながら、お休みの日をあちこち走り回るのは...楽しくも難儀なことでした。

おかげで体調まで崩してしまって、ほぼ一週間寝込んでしまいました。現在、絶賛療養中です。

とはいえ、今年はアニメエキスポで初めてパネルに登壇させていただいたり、昔、お仕事をご一緒した方ともお会いできたので...。新鮮な体験の恩恵にも預かれました。よしとします。


そして、みなさん、大雨の影響は受けていませんでしょうか?

無事であることを祈っています。


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では、また。

(小原)


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