「ありがとう」をデザインでつなぐ。
かものはしプロジェクトの「Okun(オークン)=16年の感謝を込めて」という冊子とWebサイトをつくりましので、よかったら見てください。という紹介です。
が、なんでその「Okun」をつくったのか、ということを書いてみました。
NPOのデザインをしていて、「ありがとう」を伝えるものをつくれるということは、けっこう嬉しいことだなと思います。
NPOのデザインに携わっていると、「寄付」が目的の場合が多く、そのために、どうやって活動や思いを伝え「共感」してもらい「寄付」してもらうか、ということを考えてつくることが多くなります。
もちろんそれは活動を続けていく上ですごく大事ですし、そこを伝えていくのが僕たちの仕事だと思っています。
寄付をお願いするときに感謝を伝えつつ、お願いする場合や、年次報告書などで1年の活動の報告を伝えつつ、感謝を伝えることはよくあるのですが「感謝」だけを伝えるというケースはあまりありません。
NPOにとってシンプルに「感謝」だけを伝えられるのは、取り組んでいる社会課題を解決できたとき、や、大きく次のステップに進んで、より多くの問題解決に進むことができるようになったときなのかなと思います。
シンプルに「思い」を届ける。
昨年、かものはしプロジェクトが、設立以来取り組んでいた、カンボジアでの「子どもが売られない世界をつくる」ための活動を「ものづくりを通じて、自立的に生きる女性を育てる」活動にシフトし、その活動を現地で行っていたカンボジア事業部がsalasusuという新法人として新しいスタートを切りました。(ちょっと間違ってたりしたらごめんなさい!)
詳しくはこの辺の記事で
そして、かものはしと昨年度の年次報告書のミーティングをしていたときに「今年度一番伝えたいのはやっぱりカンボジアの新しいスタート」ということだったので、最初はどうやって年次報告書で伝えるか、一緒に考えていました。
話していくうちに、カンボジアで新しいスタートが切れるのは、今支援してくれているサポーターはもちろん、初期のころ支えてくれていたサポーターや、少しの期間・寄付だけでも応援してくれた人、などなど、ほんとに色んな人のおかげだよね、という話になっていました。
それなら、やっぱり、みんなに感謝、ありがとうという気持ちを素直に、シンプルに伝えたいね。でも年次報告書だと、今支援してくれている人にしか届かないよね。となり、年次報告書とは別に、シンプルに「ありがとう」を伝えるサンキューブックをつくって、それを過去に支援してくれたサポーターの方などに配って、その思いを届けよう、ということになりました。
感謝が埋もれないように。
つくる過程では、年次報告書の中で伝えて、過去のサポーターにも配ればいいのでは、という方向性ももちろんありました。
でも、年次報告書にはさまざまな情報がたくさんつまっているので、たとえ表紙や誌面をたくさん割いたとしても、かものはしが一番伝えたい「感謝」が埋もれしてまうのではないかと思いました。
それに、やっぱり、感謝を伝えたいのであればシンプルにそれだけを伝えるものをつくるほうが思いが伝わる!ということで、できたのが「Okun(=ありがとう) 16年の感謝を込めて」です。
これまでの支援は、カンボジアの工房で働く女性たちはもちろん、その家族、スタッフ、警察、さまざまなところにつながって、たくさんの「ありがとう」をつくってきました。
そんな「ありがとう」のメッセージとストーリーをたくさん載せました。
そして、これまでの「ありがとう」だけでなく、これから新たにスタートを切る事ができることへの「ありがとう」もきちんと伝えられるようにしました。
思いは届いてた。
毎年年次報告書のアンケートをとっているのですが、今回は例年より回答率が高く、また、かものはしの感謝がきちんと届いたことがわかるコメントを多くいただけたので、その思いをきちんと届ける役割は少しは果たせたのかな、と思っています。
以下アンケートのコメントの一部
・作り物でない笑顔の写真がたくさんあったから。一緒に笑顔になりました。
・ みんな良い顔してるな、と思った。
・表情が生き生きしていて嬉しかった。
・自分が募金したお金が人の役に立っていると実感できました。
・一人一人のストーリーがよくわかりました。
・とても丁寧に作成してあり、心がこもっていると感じた。
・ほんの僅かな寄付でもこのようなしっかりした冊子を送ってくださり、たくさんの感想いただけると、私としても恐縮ですが、かものはしの活動応援してきて良かったと心から思いました。
・こちらこそありがとうと言いたいほどパワーをもらった。
・現地の声を直接聞くと、やはりとても嬉しい。顔が見える支援に近づく気がする。
寄付をいかにもらえるよにするか、ということにばかり目が向きがちになってしまうNPOの広報ですが、もらうだけでなく、支援をしてくれ人たちに対して、形式的なものでなく、きちんとお礼を伝えるということも、やはりすごく大事だなと思いました。
寄付が増えるという成果には直接的にはつながらないかもしれないけれど、そういう真摯な姿勢は「支える人」を増やすことに結果的にはつながっていくと信じています。
そして、シンプルに感謝だけを伝えるものをつくれる機会はというのは、なかなかないので、その機会に立ち会えたことがうれしく思います。
今回のように、「ありがとう」を伝えることで「世界を変えようとしている人たち」と「それを支える人たち」をつなげることができるのもまた、デザインならではなのかなと思いました。
webサイト版はこちら
おまけに
ここまでのものをつくるのはやっぱりNPO側の思いがとても大事で、その思いを形にする、というのが僕らの仕事。「感謝を伝えたい」という思いで、僕らをぐいぐい引っ張りつつ、それに応えすぎて、こうしたほうが絶対にいい!というこちらのハードな要求にも答えてくれたかものはしのスタッフ(小畠さん後藤さん亀ちゃんとインターンの子たち)にはとても感謝しています。
ちなみに、「Okun」の撮影でカンボジアに行ったとき、サイみんなで家族引き連れて社員旅行でかものはしの工房にいきました。たのしかった!(注:旅費はかものはしからもらってません!サイ持ちです!)
「Okun=ありがとう 16年の感謝を込めて」
クライアント:NPO法人かものはしプロジェクト
プランニング・アートディレクション・デザイン:生駒浩平(sai company)
写真撮影:安田菜津紀(Dialogue for People)
制作進行管理:平田雄一郎(sai company)
Webサイトコーディング:岡田直子(sai company)
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