マーケティングって競馬に似ているんじゃないか説

今年もはや6カ月が過ぎ、折り返しです。
なので、この6カ月で上がったマーケティングに対する解像度を自分の言葉で表現してみます。
今回は、マーケティングにおける確実性と不確実性についてまとめました。テーマはマーケティングに携わらない人でもなんとなくわかる理論、ということで競馬をたとえに書いてみます。

  1. 課題設定:2022年上半期の壁
    いきなりですがマーケティングが100%当たる、ということはあるのでしょうか。
    こんなことを半年考えていました。
    本などを読むとあたかも100発100中で当ててきたといわんばかりの方もいますが、私の場合はそんなことはなく、むしろだいたい外してます。
    多くのマーケターは自分の見せ方もうまいので、あたかもすべて当たるように見せるのも上手だと思ってます。私も傍から見れば多分そう。
    が、それはマーケティングの在り方を一方でねじ曲げているんじゃないかとも思ってます、なぜならマーケティング領域外の方が、”良いマーケター雇えばすべて100%当てて、一円の投資も無駄にせずに業績伸ばしてくれるんだ!”と勘違いしてしまうので。
    かといって、マーケティングは再現性がないなんていってしまうと、”じゃあもうマーケターっていらないじゃん”、となるのですが、そういわれると”うーん”ってなる、という非常に曖昧な悩みを抱えていました。

2.この問いに対する私なりの仮説と意見
この課題に対しての私のスタンスは、
”マーケティングには100%言い切れる確実性の高い領域と、100%言い切れない不確実性の領域が入り混じる仕事”
であるということです。
言い方を変えると、
”確実性と不確実性が入り混じるということを理解し、事業を正しくハンドルできるマーケターが優れたマーケターである”ということです。
つまり問いに対しての答えは、YESANDNOで、
・100%突き詰めて当てられる領域=戦略
・不確実性が高いので、検証すべき領域=アクション
という整理です。

あいまいな表現で逃げようとしていると思われるかもしれませんが、そういうわけではないので下で説明します。

3.突然ですが、競馬の話をします。
AからJの10頭の馬が出走するレースがあるとします。
なんとなくのは肌感で3連単(1,2,3位をすべて的中)を当てるのは1/720(10×9×8)の確率です。
まぁ当たらないですよね、かといって720通り買うのも意味がない、なぜなら競馬の期待値は60%程度なので全張りするとただ損する。
そこで多くの競馬ファンはまず軸馬を決めます、軸馬とは”さすがにこの馬は外さないだろう”という馬です。
ここが固まると一気に確率があがります。
もしAが1位でくるであろうと確信を持って言えるのであれば、あとは2位と3位を当てればいいので、1/72(9×8)まで確率は上昇します、10倍当たりやすくなる。
さらに、2位3位に関しては残り9頭のうち、状態や戦歴をみて4頭まで絞れれば、1/12(4×3)まで確率は上がります。
ここまでくれば、1馬券1,000円分買っても計12,000円で済み、高い確率で競馬に挑めるわけです。
恐らく競馬に詳しい人は色々突っ込みどころはあると思いますが、多くの確率の中で絞り込むという作業はこういった思考をしているのだと思います。

4.ここでマーケティングの話に戻りますが、マーケティングの仕事の進め方って競馬に似ている
マーケティングは確実性と不確実性が混ざる仕事だというのが私の現時点での理解です。
つまり、100%これは言える!という領域もあれば、どれだけ優秀なマーケターをもってしても、ここは100%そうだとは言えない・・・ という不確実な事象が存在していて、むしろこの”不確実である”ということを”不確実である”と理解できるマーケターが優秀なのだと考えます。

マーケティングのSTEP論
①マーケティング戦略を定めきる=軸馬を決める
戦略とはまさに軸馬を決める感覚です。
これがこのサービス・プロダクトをお客様に届けるど真ん中の幹である、という1本軸、絶対にここだけはぶらさない、というものです。
なぜ軸馬と戦略を合わせて表現したかというと、マーケティングの世界において、ここは100%当てることのできる確実性のある仕事だからです。
逆に言えば、軸馬を間違えるとそのあと何をどう頑張ったって間違える。
現場はすごく頑張って疲弊しているのに、結果が出ない事業は根本的にこの軸馬を間違えている。
軸馬が違っていると、そのあとの馬が的中していてもすべて意味がない。
じゃあどうすればこの軸足が決まるのかは今回は割愛しますが、ここは100%(多分私の今のレベルだったら80-90%くらいの確率)で当てることのできる領域です。
具体的には一次情報に触れて、顧客の声を聴くことと、マクロなインプットことで研ぎ澄ませることができる領域です。
なので、ここに課題感のある事業家・経営者は、信頼できるマーケターにここを依頼すべきです。

②アクションに落とす=2位、3位の馬候補を洗い出す
では軸馬が決まったらどうでしょうか?
2位、3位の馬を決める必要があります。ただし、これは軸馬と違って、不確実性の高い領域であることを考慮しなければならない。
ちょっと抽象度の高い議論が続いたので、具体的な例を出しましょう。
非常に香りの強いフレグランスシャンプーを発売するためにCM(別にこれはイベントでもWEB施策でもなんでもよいです)を打つとします。
その戦略は、”夏の汗臭い男性をターゲットとし、男性のモテたいというインサイトを刺激すること”だとします。
ではそれをCMでどう表現しますか?
恐らくこんな会話があると思います。
製品担当者:まず、CMにおいてはターゲットである男性に”夏のあなたの汗は非常に臭い”ということを強烈に意識させないといけないと思います。
ブランドマネージャー:それもそうだけど、結局男性はモテたいんだから、直感的に良い香りが女性に刺さることを表現すべきだわ!
代理店マン:それもそうですが、なぜこのシャンプーが他のシャンプーよりも香りが強いのかというのを伝えないと消費者が買いたいと思わないのでは?

どれが正しいと思いますか?
答えはどれも答えになりうる、です。
上記の会話では下記3つの方向性があり、現時点ではどれも答えになりえます。多くの場合、表現はこのどれかに含有されます。
・課題喚起型
・便益強化型
・RTB強化型(Reason To Believe)
ただ、これまで働く中で、これを直感的に、そして組織において一番声が大きい人が言ったことに流され、恣意的に決まってしまうケースがほぼです。
今回だと、一番声の大きそうなブランドマネージャーが便益強化型なので、電車の中でこのシャンプーを使った男性に女性がいいね!と言っているようなCMになりそうな気がしますね。
ここ!ここがまさにポイントです。
これは答えがないのです。
答えがないことに議論をして、無理やり絞ろうとすると外します。
つまり、マーケティングにおいて戦略以下のレイヤーにおいては間違った”決め”が非常に危険である、という事例です。
これはマーケティングにおける不確実性で、100%は言い切れない領域だからどの可能性も検証してみましょう、が正しい意思決定であり、それをナビゲートできるマーケターが優秀なマーケターだと考えます。
勿論、局面においては一発勝負にかける場合もあると思いますが、少なくとも顧客インタビューや定量調査で勝てる確率を高めるべきです。
競馬で考えると、この戦略以下=不確実性の高い領域=2位3位の馬を決めるということなので、できる限り幅を持たせてしっかり検証をする=可能性のある馬券は買っておくということです。
1位をAとするのであれば、2位3位はB-Eと幅広く可能性を見て、その組み合わせで勝っておくことで、1発満塁ホームランはないが、確実にヒットできる状態を作るということです。

5.まとめ
マーケティングは3C分析をもとに、戦略を1つに絞り込んでいく確実性の高いプロセスから始まり、これがいわゆる戦略レイヤーのマーケターの仕事。そこからアイディアを出し、不確実性の中でそれらをくまなく検証していくプロセスがありこれがアクションレイヤーのマーケターの仕事。これは変な固定概念で縛らずにくまなくアクションしていく愚直さとスピードが重要です。
この2STEPのブリッジには、戦略レイヤーとアクションレイヤーのマーケターの相互理解が非常に重要です。
取れるアクションの幅をあまりに知らない、現場解像度の低いマーケターはどこまで行っても軸馬となる、骨太な戦略は立てられません。
一方で、真ん中にある戦略をしっかり落とし込む過程の中で、不確実だからと言ってむやみやたらにアクションだけしていてもただただ徒労に終わるので、アクションレイヤーにおいては正しく戦略を理解し、アクションの中でも都度戦略に立ち返るマインドセットが重要です。

今回も長々書きましたが、こんなことをお風呂に入りながら考えたのでシェアさせて頂きました。良ければいいね・シェアお願いします!
では!


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