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リモートワークについてのスタンスを決めるために過去の事例を思い出す。

コロナ禍に直面した多くのオフィスワーカーが「リモートワーク」という新しい「普通」の働き方に直面している。

僕の周りでも多くの人が多かれ少なかれこの新しい働き方に取り組んでいるがよく耳にするのは
「今のところ仕事は問題なく進んでいるが、これがずっと続くと組織としての一体感が保てなくなるのではないか?」
「オペレーティブな仕事の生産性はむしろ上がったが創発的な仕事のための何気ない雑談などの偶発的コミュニケーションが減り将来が心配」
「新入社員のオンボーディングが今まで通り行くか心配」
などなどいまリスクが顕在化しているという声はあまりなくて、この先このままで大丈夫なのかという漠然とした不安があるというのが多いように思う。僕も同じようなことは感じる。

ただ一方で僕は今年48歳で、社会人になって30年近くが立っているからテクノロジーによって働き方が大きく変わった機会を何度か経験している。

その経験の中でも今回の「リモートワークの是非」というテーマとよく似ていた経験は90年代の後半から00年代前半までのオフィスワーカーのイシューだった「社員に一人一台パソコンを与えるべきか否か」というテーマだ。

オフィスにおいて一人一台パソコンがあることが当たり前の状況になってから働き始めた人はちょっと信じられないかもしれないが、僕が20代の後半に入った頃、インターネット+パソコンをオフィスで一人一台に配ると
「仕事をしてるふりしてネットサーフィンする奴が出てきて生産性下がる」
「報連相をなんでもメールですます輩が出てきて社内のコミュニケーションが希薄になる」
「パソコンを触ったりネットで調べたりして仕事した気になるから本当のクリエイティブな仕事が生まれない」
などの懸念があり、多くのオフィスでパソコンを一人一台配るかどうかについて喧々諤々の議論が行われたと記憶している。

そして中にはパソコンは作業があるときに共有のパソコンコーナーに行って使う、というような対応をしていた会社が多くあったものだ。また部署共有のメールアドレスがあって、部署付きのアシスタントが毎朝届いたメールをプリントアウトして該当者に配り、返事の内容を指示のもとに返信するなんていう風習を持つ会社も多かった。

なんかいまのリモートワークを巡る議論との余りの類似性に驚かないだろうか?
「リモートで仕事をサボタージュする奴が出てきて管理できないんじゃないか?」
「リモートでZOOMやチャットだけでコミュニケーションしてると一体感が希薄になるんじゃないか?」
「リモートで濃いコミュニケーションができないからクリエイティブな仕事がうまくいかないのでは?」
というような懸念は先ほどパソコンを社員全員に配るかどうかを議論していたときに心配されていた内容とその本質において全く同じだ。

確かにパソコンを一人一台配ったことでそれまでパソコンがなかったときにあった賑やかさや、コミュニケーションの生感は一定減じられたかもしれない。そしてそのことによるデメリットはきっとあったはずだ。だけどあれから20年たってやっぱりパソコンは一人一台配るべきじゃないという結論に至った会社はほとんどないはずだ。

新しく生まれた技術を活用することで生まれる圧倒的な生産性の前に古き良きささやかなメリットが失われることは仕方がないことだと受け入れられたのだと思う。

今回のリモートワークを支える様々な技術は、僕ら全員に「どこでもドア」のような強力なツールをもたらした状態と言える。どこでもドアがない社会から全員が持ってる社会にものすごい短期間の間に変化してしまった。これは好むと好まざるとにかかわらずすでに起きてしまった変化だ。

これは便利で強力なツールだからこそ、またふるきよきささやかなメリットがその影で少しづつ失われていくのだろう。しかし誰にでもどこでもドアが使える社会なっているのに、それがないかのように振舞う企業はどこでもドアがある前提で振舞い方を決める企業にどう考えても遅れをとってしまうだろう。ちょうどパソコンが全員に配られる社会を前提にしなかった企業のように。

なので僕は暫定的にではあるが過去の事例を考えるとこの「リモートワーク」というものが一定のデメリットを孕みつつも結局一般化し、それを所与の条件として受け入れた上で「どう良い組織を作るか」「どうクリエイティブな仕事をするか」「どう新人をオンボーディングするか」を考えていくというべきだろうという結論に至っている。

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北欧、暮らしの道具店(http://hokuohkurashi.com)というECメディアを運営している株式会社クラシコムという中小企業の社長です。