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#74 歌詞とメロディが溶けあった音楽のようなモノづくりとは~「自分の仕事をつくる」より~(2024/04/26)

・設計を終えてから組みたてるもの
・つくりながら形を探してゆくもの

モノづくりを大きくこの二つに分けると、前者の代表が工業製品や建築物。そして後者は粘土による造形です。

働き方のバイブルである「自分の仕事をつくる」で雑誌作りについて紹介されている内容が、私の仕事のシステム開発と照らして色々と考えさせられましたので、紹介させていただきます。

〇歌詞とメロディ溶けあった音楽のようなモノづくり組織とは

「自分の仕事をつくる」の中では雑誌「サイゾー」の創刊者である小林弘人氏の編集部の働き方について紹介されています。

雑誌「サイゾー」は、記事の面白さもさることながら、グラフィックデザインの絡み方が絶妙で、歌詞とメロディが別々にあるのでなく、その二つが溶け合った音楽のような印象が感じられる稀有な雑誌と言われています。

今の雑誌作りはすごく分業化され、その合理性よりも弊害のの方が目立っていると指摘し、小林氏達は対極的にデザイナーを編集部内にインハウスで抱えていました。

ただ同じ空間で仕事をするだけなく、デザイナーに400字の記事を書かせる筆記試験を用意しデザイナーに編集者の論理を構築する力を求め、互いにすれ違わずに切磋琢磨できるようなチームを作る。
それによりバンド感が生み出されるのだと。

〇バンド感を生み出すしごとを取り戻す

チームのコンセプトや編集方針によりも、小さくて具体的な工夫の積み重ねが、バンド感のある音楽のようなメディアを作っているのだと。

どういうことかというと、雑誌というメディアづくりは、編集とデザインだけで語れるものでなく、営業だとか、読者には見えないフェーズまで含めた十次元くらいのモノづくりであり、複数の次元が絡み合って、その結果いちばんバランス取れた部分が提示されるものだということです。

しかし、残念ながらこうした奥行きを抜きにして、分業化され合理性を追求すると、編集とデザインなどといった、せいぜい二次元くらいのレベルで考えられてしまうことが多くなり、バンド感は失われてしまいます。

そこで、DTPを用いてクラフト的なモノづくりへの回帰が行われました。

DTP(DeskTop Publishing)とは、出版物や印刷物の原稿作成や編集、デザイン、レイアウト、組版などの作業をコンピュータで行い、最終的に印刷可能な原稿(版下)の作成まで行うこと。

DTPによるコストダウンは副次的なメリットとして享受しながらも、大事なのはコンセプトをうまくシェアしながら、スタンドアローンでなくチームで協力出来るようなすり合わせを行うということです。

F1チームのように、メカニックがいて、全体の進行指揮をする人がいて、みたいに、一つのファクトリーを中心に据えていかないと、バンド感を生み出すのは難しいと。

〇バンド感のあるシステム開発はスケール出来るのか

私が勤めるシステム開発は元々はF1のようなチーム単位で仕事をしていましたが、組織や事業の拡大に伴い合理化を求めて分業が進み、バンド感が失われていくのを感じていました。

作るプロダクトが大きくなり提供する顧客も多くなるに従い、合理化のための分業は必要不可欠です。
その中でも、分業化した複数のチームが一つのファクトリーを中心に据えたような関わりが出来るような構造を整えねばなりません。

そのために必要なのは、方針を決めてみんなで従うということではありません。関わるメンバー多くなると方針は方向性を決める程度にしか機能しなくなります。
その方針を各チーム・メンバーに落としこむために翻訳して伝えてすり合わせることが出来るリーダーが介在することで、全体のコンセプトにあった小さな工夫の積み重ねが可能になります。

言うは易く行うは難しですが、分業の効率化とバンド感のある仕事の共存へのアプローチを探る良いきっかけになりました。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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