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#97 生産性の高い組織のコミュニケーション~雑な依頼と雑な相談の違い~(2024/06/11)

こんにちは。ITベンチャーエンジニアのこへいです。

私は現在、プロダクト開発のスループットを向上させるべく、プロダクト開発における仕事の設計に取り組んでいます。

今回は雑な依頼と雑な相談の違いと生産性への影響について考えます。


〇雑な依頼はチーム全体を停滞させる

システム開発の現場での営業とエンジニア間のコミュニケーションの多くは、顧客からの問い合わせや見積もり依頼対応についてです。

営業→エンジニアへの雑な依頼の例です。

雑な問い合わせ依頼
〇〇から問い合わせがきたので確認お願いします
雑な見積もり依頼
顧客から〇〇について見積もり依頼がきたので対応お願いします

この依頼には、営業側の意思が何もありません。顧客からの問い合わせ・見積もり依頼の単なる横流しです。

丁寧な依頼の例です。

丁寧な問い合わせ依頼
〇〇からの不具合確認の問い合わせがきました。
こちらで同様の操作をしたところ、確かに仕様とは異なる振る舞いでした。顧客の業務影響があるため、今日中に状況の報告がしたいです。
再現URL、再現状況と合わせて確認お願いします。

丁寧な見積もり依頼
顧客から○○の課題があると相談をいただきました。
この課題が解決出来ると顧客の売上向上が見込めます。私たちのプロダクト価値向上にもつながるので、対応を進めたいです。
見積もり対応お願いします。

情報量の差はありますが、決定的な差は「営業担当自身の意思の有無」です。

問い合わせにしろ、見積もり依頼にしろ、顧客は何かしらの課題を抱えており、その課題を解決してその対価をいただくのが私たちの仕事です。

顧客の課題を自分ならどう解決するかが先にあり、解決に至るまでの技術的な観点での指摘や開発の依頼でなく、単なる丸投げは「雑な依頼」です。

雑な依頼を受けたエンジニアは、課題解決に必要な情報収集から始めるため、時間を奪われチームが停滞します。

〇雑な相談はチーム全体を進捗させる

一方で雑な相談が出来るチームは進捗を出しやすいです。

正直、エンジニアがすぐに対応できるような情報が完璧に揃った丁寧な依頼をしていただくのは、プロダクトへの知識が豊富で技術的な引き出しを多く持っている必要があるため、難易度が高いです。
営業サイドが顧客からヒアリングした情報を元にざっくりとして方向性を決めた時点で相談してもらえると、技術的な観点で不足している情報や現実的な方向性へのアイデアすり合わせが出来ます。

規模の大きな機能の見積もりなどは共有いただいた情報を全て飲み込むのは難しく、1回の相談で完結することは稀です。
こまめに相談いただくことで、回を追うごとに違った観点での気づきを見つけられるため、より精度の高い見積もりをすることにも繋がります。

最初に依頼いただく際に依頼内容が完璧に整理されている必要ありません。何度もコミュニケーションを繰り返して、一緒に最適な落としどころを見つけることが重要です。

そのために、雑な相談が出来る関係性が構築出来ているとチームは進捗します。

〇雑な依頼が生まれる背景と対策

さて、なぜ雑な依頼をしてしまうのでしょうか。
大きな要因は仕事の全体感と相手の仕事への理解が不足していることでしょう。

顧客にどのように価値を提供するのかの全体像が見えていないと、自分がどこまで関与すべきかわからず、下手に動いて失敗するよりはマシと考え関与する領域を小さくしてしまいます。

仕事のやり方が定義されていないメンバーシップ型の組織では、仕事が人に依存しているので、既存のメンバーと新たにジョインしたメンバーのスキルセットに差がある場合に、仕事のキャッチアップにも苦労します。
このような組織の構造によって全体感を掴むのが難しい場合もあります。

また、単に失敗を恐れて雑な相談も出来ないのかもしれません。
それでは互いに不幸なので、失敗の恐怖を取り除くように手を差し伸べることも必要でしょう。

変化の激しい組織の中では、担当する仕事がころころ変わったり、明らかにキャパオーバーの仕事が回ってきて、人への依頼が雑になってしまうようなこともあります。

そのような状況でも仕事の全体感を理解していると、優先順位を付けたり相手との役割分担を良しなに調整したりも出来ます。
が、全体感を把握することは容易なことでもなかったりします。


雑な依頼が生まれるいくつかの要因を踏まえて、依頼時に用意して欲しい情報をテンプレート化したり、なぜそれらの情報が必要なのかを含めて仕事の言語化を進めて気づいたのですが、雑な依頼を減らすのに一番大切なのは、結局、自分が顧客の課題を解決するという当事者意識かと思います。

当事者意識がなければ必要な情報を整理しても、その背景を理解しようとはせず定めたルールに従うだけなので、ルールが定まっていない仕事では雑な依頼をしてしまいます。

逆に当事者意識を持ち、互いのことを深く知ることでリスペクトが生まれ、雑な依頼をするのが失礼であると気づけます。

仕事の言語化と合わせて、役割の違うメンバー同士で互いのことを深く知るコミュニケーションを積み重ねることもやっていきます。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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