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家飲ミノススメ

最近、めっきり家飲みが増えた。ここ20年…いや自分史上最高レベルの家飲み頻度です。そんな時飲むお酒は圧倒的に白ワインが多い。それも1本500円から1,000円前後の安ウマワイン。1,500円を超えると悩みます。店内一周して、もう一度その棚に戻ってきて、それでも欲しかったら買おうかと…。もちろん赤も飲みます。イメージ的にはむしろ赤ワインばかり飲んでいると思われている節もあるけど、家では10回に8回、約分すると5分の4、実に80%が白ワインである。それにはキチンとした理由があり、忘れないように(キチンとした理由を忘れてしまうというのもなんだけど、まあそこはいい歳なので。)メモをしておこうと。ということで、安ウマワインのススメです。

家飲みで白ワインが多い理由は大きく3つ。

ひとつ目は、ある程度保存が利くということ。家で飲むとどうしても飲み残しが発生する。しかも中途半端な量が残る。そんな時、白ワインならスクリューキャップを戻し、冷蔵庫のドアの内側のウーロン茶や逆立ちしたマヨネーズの隣に立てておく。それだけ。翌日はもちろん、4、5日経ったあとでもなんとか飲める。この点は安ワイン、特に安い白ワインの特長であると言える。保存が利くというより、劣化に対する許容範囲が値段の高いワインに比べて少しマイルドであると言えるのかもしれない。

二つ目の理由、料理に使いやすいということ。理由1のように、中途半端な量が残ることも多い家飲みワイン。もともと安いから残ったワインは惜しげもなく料理に投入できる。場合によっては、新しいボトルを開けて、料理に使った残りを飲むこともあるくらい。その使い道は万能で、炒め物、パスタ、煮物、蒸し物と無限大。日本酒もよく料理に使われるが、どうしても独特の粘りや甘味が出てきてしまう。白ワインを火にかけアルコールが飛んだ後に残る爽やかな酸味が大好きだ。アサリのワイン蒸しなどを作った経験のある人はわかると思うが、貝から出る苦みや塩味と、白ワインの酸味はべらぼうに合う。すごく合う。またセロリやネギ、ニンニクなどの香味野菜、ハーブなどとの相性は抜群。勝手な印象だけど、料理に関していえば日本酒は白ワインの代わりには使いづらいが、白ワインは日本酒の代用ができる…と思っている(日本酒ファンのひとごめんなさい)。この点、赤ワインは料理に使う機会がかなり限定されしかも難しい。牛肉の赤ワイン煮込みを作ろうとして、ワインをどぼどぼと注いだ結果、お店で出てくるあの深みのあるボルドー色とは程遠く、薄紫色になった肉に食欲減退を招いた経験がある人も多いと思う。

三つ目。食事に合わせることを考えると極めて万能であること。前述のように料理に使いやすいのだから出来上がった料理と合わないはずはない。そもそも家で飲みながら食事するとき、マリアージュがどうとか考えないし、まあ「不味い組み合わせ」さえ避けられれば良いということもあるが、それでも合わせやすいのは間違いないと思う。肉は赤、魚は白。よく言われる表現で間違ってないと思うけど、べつにいいじゃん。極論すると仮に合わない組み合わせになってしまったとしても、間違った組み合わせを安く知ることができればそれはそれでいいかも。

さて安ウマワインには問題点もある。それは飲む品種が限られるということ。いつも同じ品種ばかり飲んでいるといっても過言ではない。特に安ウマのメッカ、チリ産ワインともなるとこの傾向はさらに顕著になる。安いということは大量に生産しないといけないわけで、そうなるとどうしても多く作られているブドウに限定されてしまうことになる。白はシャルドネ、ソービニョン・ブラン、赤ならカベルネ・ソーヴィニョン、メルロ、シラーといったところか。同じ品種の違いを比較的安価に経験するには好都合だが、それでもたまに違うものを欲してしまうのが人間である。

シャルドネといえば言わずと知れたフランスの銘醸地ブルゴーニュの白ワインに使われる高級品種だが、それを期待して安ワインのシャルドネを飲むと裏切られる。シャルドネというブドウはそれ自身にあまり特徴が無いと言われており各醸造家はそこに独自の個性を出そうと必死なのである。だから高いのである。その努力の賜物を500円や1,000円の新世界ワインに期待してはいけないのである。これが安いシャルドネはその個性の無さから「飲みやす~い」とか「すっきりして何にでも合う~」と言われる所以だ。当り障りの無い味とも言えるので家飲みにはもってこいなのだが、やはり違うものも飲みたくなる。アルパカという500円チリワインがある。品種も豊富で白も赤もとても美味しい。白ワインのおすすめはシャルドネとセミヨンがミックスされたもの。とても500円とは思えません。シャルドネの個性の無さをセミヨンという変化球が上手にまとめている。ピンチの時には角盈男。レロン・リーとソレイタには永射なのである。脱線した。

ともすればマンネリ化してしまう安ウマ白ワイン界の救世主が、イタリア・スペインとなる。特にイタリアのワインは元々使われるブドウ品種が多くしかも産地による個性がわかりやすく、市場で安いものが見つけやすい。そもそも作ったそばから飲んでしまうようなお国柄なので熟成など待たずに飲む前提であることがリーズナブルな値段にも反映している。品種もトレッビアーノ、ヴェルメンティーノ、ガルガーネガ、ピノ・グリージョ、カタラット…と豊富。また南北に細長いイタリアの国土のおかげで、ドイツやフランスに近い北、地中海に面した真ん中から南とまあ個性豊か。ということで最近はもっぱらイタリアが多いです。とにかく家飲みの基本は、飽きないこと。これに尽きる!なにせ1,000円で行ける世界旅行。お試しで買ってみたワインの味を美味しいと感じたら、同じ品種で違う国、同じ国の違う品種と横に広げていきやすいのが安ウマの魅力です。口に合わなくてもいいじゃないか!何事も経験。

こんなふうに自宅軟禁が続き、それはそれで充実してしまうと、この状況から抜け出した時に果たして店飲みに戻れるのか?市場経済は元の消費レベルまで戻れるのか?少々不安ですが、早いとこ、世の中が普通になりますように。

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