見出し画像

私には味方がいなかった1

父と最期の時を過ごし

父の遺体を発見したのは私だった。

いつも見ている見守りカメラに父の姿が見当たらなかった。

仕事中LINEを送っても電話を入れても繋がらない。

気になって仕事を早退した。

嫌な気がしながらも

帰れば、いつもの場所でテレビを見ている父の姿があると思いたかった。

「急に帰ってきてどうした?」

と言う父がいるはずだった。

駐車場に車を止めるといつもリビングに座っている父の姿が見えるはずだった。

鼓動が高鳴りつつ、慌てて家の鍵を開ける。

おとーさーん

と読んでも家の中は静まり返っていた。

心臓のバクバクが止まらない。

おとーさん??

父の酸素チューブが上がるはずのない2階に続く階段に伸びている

おとーさん!!!!

慌てて2階に上がった時

目に入ったのはもう動かない父の姿だった。

気が動転した。

もう呼ぶべきは救急車ではないことはわかった。

父は在宅で緩和ケアをしていた。

でも昨日まで

「もう(映画)見るもんないぞー。」と笑ってた。

目の前の光景は現実と思えなかった。

私は姉に電話した

お父さんが動かない

絶叫に近かったと思う。

姉は驚きつつも

病院に電話して

と静かに言った。

あ、そうだ。看護婦さん。

手が震えてうまく電話帳を開けない。

なんとか電話をかけて看護婦さんに状況を伝える。

すぐに向かわせます。

看護婦さんが来るのが遅く感じる。

ほんの数分だったかもしれないけど、その間に何度も

まだですか?と電話をかけた。

私はどこかにリセットボタンがないか、探したくなった。

でもそんなものはどこにもなかった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?