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町の歯医者さん

今日、久しぶりに歯医者に行った

特に歯が痛い訳でもなかったが、定期的な検診も兼ねて、今まで通っていたとことは別のところに行ってみた
家から一番近く、通勤の時にも見ていたので、歯医者があるのは知っていたがとても小さなところだったので、行ってみようと思う気が全くなかったのだ。
しかし、友達がそこに通っていてとても良いところだったと話していたのを聞いて試しにと思い予約してみた。

そして、今日雨が降り憂鬱な気分だったのだが、時間がきてしまったので、重たい腰をあげ顔も洗わずほぼパジャマみたいな格好で、歯医者に向かった。

時間ギリギリに着いてしまって、少し申し訳ないなぁと思いながら玄関に入る。
こんにちは、と受付の女の人の声がしたが雨の音にほとんど掻き消されてしまったので、聞こえなかったフリをした。
保険証を受付の女の人に出す。対応はまぁ普通だ。
特別丁寧な感じでもないし、かと言って愛想が悪い訳でもない。
待合室にはベンチが一つ、1人がけのソファが二つあったので、私はソファに腰かけ問診票を記入する。
着いた時には自分しかいなかったのだが、その間に他のお客さんがきて少しだけ部屋が窮屈になった。
その待合室の隅にはウォーターサーバーとコーヒーマシンが置かれていた。

使い方がわからない人はお気軽にお尋ねください♪

優しいなぁと思いながら、歯医者に行ってコーヒーを飲もうとする人なんているのか、の疑問の方が大きくなっていく。
そうすると、このコーヒーマシンの維持費は無駄な気がするなぁ、ウォーターサーバーだけでいいんじゃないのかなぁ、なんて余計な考えていたら名前を呼ばれた。

「こちらへお掛け下さい。」

久しぶりの歯医者だったので、少しだけ緊張しながら席に着く。
するとスリッパを脱ぐのか、履いたままか、どちらが正解か分からないイスだったので迷ってしまったが、結局スリッパは脱いで座った。
少しだけあたりを見渡す。
優しい雰囲気のインテリアで統一されていて、これは誰がセレクトしたんだろうなぁと考えていたら先生ではない女の人が声をかけてきた。

「レントゲンを撮るのでこちらにお願いします。
その際にお席が変わる場合があるのでお荷物も一緒にお待ち下さい。」

あれ?今座ったところでやらないんだ。んじゃ今、座らされたのは、なんの意味があったんだろう。
少し腑に落ちなかったのだが、文句を言う程でもないので女の人の言葉に素直に従う。

無事レントゲンを取ってもらい、初めに座ったところとは別の席に案内される。
今度は足元にビニールが置かれていて、スリッパを履いたまま座って良いイスだと一目で分かったので、少しだけ安心した。
またあたりを見渡すと先程と似たような優しいインテリアが置かれていた。

そして、先生がやってきた。

てっきりおじいちゃんかと思っていたのだが、40代ぐらいのおじさんだったの少し驚いた。

先生はとても優しい話し方をする人だった。
いつもなら思っている事を上手く言えずにモヤモヤしてしまうのだが、その優しい雰囲気のお陰できちんと自分の思っている事を話し、聞きたい事も聞けた。
返答もきちんと根拠を説明してくれる答えばかりだったので素直に受け入れる事が出来た。

そして、話を終える時には今までの緊張、不安がなくなっていた。

今回はとりあえずクリーニングということになったので、先生とは別の女の人がやってきた。
大抵の歯医者さんは口の中で何をされているのかわからない不安と突然くる痛みがあるから嫌いだったのだが、目の前にあるスクリーンにこれからどんな事をするのかというのを動画で見せて貰ったのでとても分かりやすく、変な緊張もなかった。
しかし、前に別の歯医者でクリーニングをしてもらった時は酷い痛みと歯茎からの出血もあり、まぁこんなものかと少しは覚悟していたのだが、実際にやってもらうと痛みも出血もなかった。


とても驚いた。
今までの歯医者さんのイメージが、ガラッと変わった。
これからもここに通い続けよう。

終わってからの待合室でのあたしは優しい気分でいっぱいだった。
あのコーヒーマシンでコーヒーの一杯ぐらい飲んで少しゆっくりしてみようかな、とまで思っていた。
きっとこれはそういう人に向けて置いているのか、なんて自己解決する。

無事に次の予約を終え、外に出る。

今度はきちんと受付の女の人の方を向き、

「ありがとうございました♪」

きちんと挨拶をした。


いつもは自転車なのだが、今日は雨だから歩いてきていた。
雨は止んでなかったが、家までの帰り道がとても愛おしく思えた。
憂鬱な赤信号も待っている時間も悪くないなぁ、少しだけ休憩出来るし良いなぁ、
そして、歩いてきて良かったと心から思った。

わたしはあの少しだけ窮屈な待合室と隅に置かれたコーヒーマシン、優しい雰囲気のインテリア、先生、が大好きになった。

次の歯医者さんの日が待ち遠しい。

こんな優しい気持ちにさせてくれた、町の小さな歯医者さん。
憂鬱な雨の日に出会う事が出来て良かった。




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