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誰かと比べてしまうこと-どんぐりと山猫-

どんぐりという響きが楽しいから?
形が愛らしいから?
どんぐりの童謡や童話って、
いつまでも多くの人に愛されていますね。

どんぐりころころ
どんぐりの背比べ
どんぐりと山猫
等々…

どんぐりを集めてみると、
同じ木から育ってきたはずなのに
丸いのから細長いのまで、
あるいはこげ茶色からキャラメル色まで、
あるいはつるつるからざらざらまで…、
似ているようで様々です。

今日は宮沢賢治の書いた
『どんぐりと山猫』のお話をしながら、
「誰かと比べてしまうこと」について
書いてみたいと思います。

『どんぐりと山猫』の
ネタバレとなりますので、
お読みの際はご注意ください。

「一番偉いのは自分だ」
と争い合うどんぐりたち。
その様子に手を焼いていた山猫大将は、
人間の男の子、一郎に相談します。
一郎は山猫にアドバイスをします。
一郎のアドバイスを元に、
山猫は争い合うどんぐりたちにこう言います。

「このなかで、
いちばんえらくなくて、
ばかで、めちゃくちゃで、
てんでなっていなくて、
あたまのつぶれたようなやつが、
いちばんえらいのだ」

そうすると、
どんぐりたちは鎮まり
争い合うことがなくなりました。

このお話は、
宮沢賢治のセリフや描写が面白くて、
楽しく読めてしまうのですが、
楽しいだけではなくて、
「どんぐりだけじゃなくて、
人間はどうだろうか、自分は大丈夫か」
と、立ち止まらせてくれます。

誰かと比べてしまうことはあります。
自分の方が偉いと競ったり、
イライラくよくよしたりするのは
人間だけではなく、
他の生き物も同じなのでしょうか。

「あの子の方が目がぱっちりしてる」
「自分の方が働いてるのに、彼女の方が給料が高い」
「あなたはまだ軽くて、私の方が辛い思いをしてきた」
等々…。

比べることができるからこそ、
楽しさや驚き、
受容や学びを
得ることができます。

ただ比べることで、
自信を失い、傷つくことがあります。
誰かを傷つけることもあります。

比べるという能力を、
どう使っていきたいですか?


誰かと比べて
しんどくなっているとしたら…

わかってほしいことや
大事にしたいことが
本当はあるのかもしれません。

何が起きているのか
こころの声に
いつもよりじっくり
耳を傾けてみるのもよいと思います。


画本宮沢賢治 どんぐりと山猫 作 宮沢賢治 画 小林敏也 好学社

ちなみに、『どんぐりと山猫』を
今までに読んだことがある人にも、
好学社の絵本を読んでみてほしいです。
小林敏也さんの絵が
ドラマティカルにお話の世界に
引き込んでくれます。

絵本は二次元のはずなのですが、
どんぐりたちがガヤガヤ騒ぐ様子や、
山猫の一喝する姿は、
三次元的にぐっと迫ってくる感じがして、
非常に面白く読めました。


イーハトーブ童話 注文の多い料理店 著 宮沢賢治 日本近代文学館


ちなみにちなみに、
私は復刻版で手に取りましたが、
大正時代に出版された当初の装丁も
とても味がある一冊となっています。

どんぐりと人間のことを、
誰かと比べてしまうことを
書いておきたいと思いました。

読んでくださってありがとうございます。


参考引用文献
『画本 宮沢賢治 どんぐりと山猫』 宮沢賢治・原作 小林敏也・原画 好学社 2014

『新選 名著復刻全集 近代文学館 注文の多い料理店』 宮沢賢治・著 日本近代文学館・刊行

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