安心のリハビリテーションでもある「作業療法」 ものを作る 身体を動かす トラウマケア
作業療法
今日は「作業療法」について書いてみたいと思います。
ものを作ること、
身体を動かすこと、
非言語的なアプローチや芸術療法に興味をお持ちの方も、作業療法について触れてみると新たな発見があるかもしれません。よかったらお読みください。
作業療法とは、下記のように定義されています。
作業療法の「作業」とは大変広義な概念であり、「食べたり、工作したり、仕事や遊びなど人の日常生活に関わるすべての諸活動」を指すそうです。
以前一緒に働いた作業療法士さんからは、「(作業とは)人々にとって目的や価値を持つ生活行為」であり、「その方の健康と幸福を促進するために、作業に焦点を当てた治療、指導、援助をするのが作業療法士」であると教えてもらいました。
例えば精神科病院では、スポーツや手芸、陶芸、他にも、SST(ソーシャルスキルストレーニング)や家族教室など、患者さんのニーズに合わせた様々な作業療法のプログラムが実施されています。
私自身も前職の大きな精神科病院では、作業療法士さんたちと一緒にグループワークや個別事例に関わる機会がたくさんありました。
患者さんの自己表現の促進や社会復帰を目指して、個別作業療法と個別心理カウンセリングを組み合わせて支援した経験がありますが、作業療法を通して、生きる楽しみや表現できる力を取り戻していく患者さんの姿を目の当たりにして、作業療法の有効性を感じました。
自信なげで無気力だった患者さんが、作業療法を始めて、そこで作った作品を嬉しそうに恥ずかしそうに見せてくださった時のことは今でも強く印象に残っています。
作業療法士さんからは作業や作品制作のプロセス支援の視点や理解の仕方、ご本人の力を引き出すための具体的な声かけの方法など、心理士の私自身が学ばせてもらうことが多くありました。
トラウマケアとしての作業療法
以前にも紹介した『大人のトラウマを診るということ~こころの病の背景にある痛みに気づく』という本からはいくつも有意義な示唆を得た気がしています。
(参考引用文献:「大人のトラウマを診るということ~こころの病の背景にある痛みに気づく」青木省三・村上伸治・鷲田健二 医学書院 2021)
トラウマの治療やケアはとてもデリケートであり、日常的な人とのかかわりや経済的生活基盤の安定も重要であると考えられています。本の中には「トラウマを話すこと、聞くことの副作用について考える」という一節もあり、安全でない状況やタイミングでトラウマ体験を無理に引き出すことの危うさが指摘されていました。「話す-聴く」だけではない一つのアプローチとして、「作業療法」を導入した興味深い事例がいくつか紹介されていました。
◎作業療法が安心と安全を再び体験するきっかけになることがある
作業療法に関する一節の引用を下記に示します。
実際に、精神科・心療内科を受診し、精神科的専門治療を受けるとしても、心理室や診察室だけで治療が進展するのではなく、作業療法や就労移行支援など、その人を多面的に支える方法をアレンジして、
その人がエンパワメントされていくケースが多いのだろうと感じます。
トラウマの治療やケアに限ったことではないかもしれませんが、長期的な回復過程を共に歩んでいく上で、ベースとなるのは安心・安全の体感を得ることであると思います。
その人が脅かされずに取り組むことができる活動が、ものを作ること、身体を動かすことであれば、
そこから共に取り組んでみるのが良いだろうと思います。
ものを作ること、身体を動かすことは、考えてみればその人らしさが現われるとても主体的な行動であるのですから。
今回は、作業療法について、少し触れてみました。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
写真は、友人の作業療法士さんの手作りのプレートです。作業療法の革細工は患者さんに人気でした。
(20210504記載)
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