8月29日　審判の日【今日のものがたり】

「ここにもおらぬか……」

　講演を終え、100枚ほどのアンケートを確認する。すべてに目を通し、すべてを処分した。ほしい情報が皆無だったからだ。余計なものを残しておくのは私の美学に反する。

　私はある人物を探すために“我が”国の学校で講演会を開いている。参加者の本名を記したアンケート用紙の提出を義務づけるかわりに会費を無料にしたら、あちこちの学校から依頼がきた。

　私は話をすることも、魔法を披露することも苦ではない。彼らは何をすれば驚き、興味を示すかを私は知っているからだ。それだけではなく、ある仕掛けも施している。
　あの魔法具を作った者ならば必ず反応する仕掛けを。

　いちご型のキャンディ……調べてわかったことだが、あれは簡単そうに見えて実のところ創作が困難な魔法具。そのようなものを作り上げてしまった者を野放しにしてはおけぬ。

　必ず見つけて、必ず私のものにする。

　――アーリン。
　
　手に入るか否か。
　それは天からの審判であろう。
　この国を、本当の“我が”国にできるかどうかの――。