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12月6日 姉が持ち帰ってきたものは【今日のものがたり】

 姉さんがなにやら大きな荷物を抱えて帰ってきた。

「お姉ちゃん、それなあに? クリスマスプレゼント?」

 妹の深景みかげが目をキラキラさせながら単刀直入に尋ねている。さすがにこんなバレバレで買ってくると思えないが、なにであるかは僕も気になる。

「これはね、電子キーボードなのよ」
「え、ピアノなの? ひいてみたいー」

 深景が姉さんを引っ張るようにリビングへ連れて行く。
 電子キーボード。家族の誰もピアノを習ったことはないし、我が家に楽器らしい楽器もないので、とても新鮮ではある。でも……

「買ってきた、って感じじゃないね」
「取材先でね、もし良かったらっていただいたの」
「太っ腹な取材先だね」
「私がどうやら相当興味深そうに見ていたのが印象に残ったみたいで」
「それでもらえるものなの?」
「普通はもらえないでしょうね。私もピアノは弾けないのでって一度はお断りしたんだけど……」
「えーわたし弾いてみたいよー」
「そう。深景のことが思い浮かんだの。弾いてみたいんじゃないかなって」
「おねえちゃん、ぐっじょぶです! わたし、今日からキーボードの練習する!」
「良かったー。キーボードも、譲ってくれた方も喜ぶよ」
「僕が弾くとは思わなかったんだ」
「あはは。ごめんね、景心けいしん。景心は深景が弾いているのを優しく見守ってくれるイメージだった」

 ケースからキーボードを取り出して電源をいれ、さっそく音を鳴らしている。

「もうすぐクリスマスだから、クリスマスの曲が弾けるようになりたいなー」
「じゃあ今度、楽譜探しに行ってみようか」
「うん、行きたーい! 行こう!」

 姉さんの言うとおり僕は、深景が弾いているのをそばで見ている派に落ち着きそうだ。

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