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1月17日 おむすびがくれたもの【今日のものがたり】

「おいしい……おいしいです……っ」
 見てすぐにわかった。こいつは腹が減っているのだと。理由はわからない。今日はこのあと予定がないわけではなかったが、今大事なのは、こいつに今すぐなにかを食わせることだと思った。
 だから、作った。
「……そんなに泣くほどか」
「ぼ、ぼくも、泣きたくて泣いているわけじゃ……ないんです……っ」
 ほっぺにご飯粒をつけていることすら気づいていないのだろうな。泣きながらもなかなかの食べっぷりだ。
「食べるものがおいしくて、泣いてしまうなんて初めてです」
「……俺も、おいしいって言われたの初めてだよ」
 なに正直に言ってんだ、俺。はずかし。
「ええっ! 本当ですか? こんなにおいしいのに」
「ただのおにぎりだぞ」
「ぼくにとっては『ただの』おにぎりじゃないです」
「……そうかよ」
「はい。そう、そしてこのおにぎり……いえ、こ
れは『おむすび』ですね」
「おむすび? おにぎりと同じだろ」
「確かにこれはおにぎりです。でも、このおにぎりは、ぼくとあなたをむすんでくれたから『おむすび』なんです」
「……むすんでくれた……」
「はい! ぼくは今日からあなたと一緒に過ごします」
「はい? 一緒に過ごす?」
 おにぎり……いや、おむすびを作っただけなのに、なぜそんな流れになるんだ?
「黙っていてすみません。ぼくが今日からあなたと仕事をするよう命じられたシンです」
「俺と仕事する……?」
 そうだ、今日これから新しい相棒が来ることになっていて……
「おまえだったのか……!」
「はい! こんなにおいしいおむすびをこれから毎日食べられるのかと思うと、お仕事めっちゃくちゃ頑張れます!」
 さっきまでめっちゃくちゃに泣いてたはずなのに、今はこっちが照れてしまうくらいの笑顔でおむすびをほおばっている。
「よろしくお願いします! 先輩!」
「……おうよ」
 ま、悪いやつじゃないってのはわかったからいいか。

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