見出し画像

11月14日 いい上司なんて【今日のものがたり】

 日本空間研究所にほんくうかんけんきゅうじょ、英語表記はJapanJ SpaceS LaboratoryL

 ここが僕の働く会社だ。その埼玉第二支所の支所長を務めている。この部署ができたばかりのころは自分が上司と言われる立場になるなんて想像もしていなかった。そもそもこの部署ができること自体、空想話のようで現実感がなかった。
 でも、この部署を立ちあげようと考えていた南川みなみかわは本気だった。本気には本気を。僕の力──あれを力と呼ぶのなら──を生かせるのであればやるしかないと思った。

 部署のメンバーは僕を入れてふたり。今年の春に入社した水戸部みとべ景心けいしんくんは、一言で言うとまじめな好青年だ。でも、冗談にも乗ってくれるし(乗ってくれるからこそまじめだと感じる)、報告書もきちんと書いてくれるし、“力”というものへの戸惑いはあるようだけど、彼のなかで折り合いをつけている。ように感じる。
 そう、力と折り合えるというのは大事なことだ。あきらめるということではなく、ともに歩む。そうすることでこの部署での仕事はしやすくなる。

『入社面接の件について』

 南川からそんなタイトルのメールが届いた。僕が面接官をするということは、十中八九僕の部署の配属になるだろう人材だ。そうか、来春、メンバーが増えるかもしれないのか。10年以上ひとりだったのに、ここ2年でふたりも……。ご時世なのかなぁ。どういうご時世だって南川に突っ込まれそうだけど。

 いい上司、なんて考えたこともなかったけれど、彼らが働きやすい環境づくりは怠らず考えていこうと思う。僕がひとりだったとき、南川がなんだかんだでフォローしていてくれたように。君たちが持っている“力”は大事なものなのだと認められて、受け入れられるように。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?