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5月21日 探偵ものといえば?【今日のものがたり】

「諏訪(すわ)くんは何読んでるの?」

 と尋ねてから、人が読書しているときに話しかけるのはまずかったなと気づいた。でも諏訪くんは表情を変えることなく、いや、ほんのり笑みを浮かべながら答えてくれた。

「探偵もの」
「へぇ。じゃあ、ミステリーなんだ」
「と、思うよね?」
「え、違うの? 探偵ものっていったらこう、謎を解く推理もの・ミステリーってイメージがあるけど」
 僕の言葉に諏訪くんは「うんうん」と頷く。

「俺も同じイメージを持っていたんだけど……大牧(おおまき)さ、疑問に思ったことない? 探偵ものはミステリーじゃないと成立しないのかって」
 諏訪くんが手にしていた本を閉じて話し出す。

「俺、探偵ものって結構好きなんだけど、探偵やってる人間だって、日常生活はあるわけじゃん? そういう、謎も事件も起こらない探偵の話ってないのかなーってふと思ったことがあって」

「探偵の日常もの……」

「まぁ、だったら探偵じゃなくてもいいじゃんかってツッこまれるかもしれないんだけど。ミステリーじゃない、推理ものじゃない、でも、探偵のお話が読みたいっていう俺のわがままを叶えてくれた小説があったんだよ! しかも、主人公の探偵がカッコいい! 俺の好きな俳優さんで実写化してほしいレベル!」

「それが今読んでる本……」
「そういうこと」
 
「ご、ごめんね。そんな待ちに待った小説を読んでるときに話しかけちゃって」
「だいじょぶ、だいじょぶ。だって、大牧も今の話聞いてちょっと気になったでしょ、この本」
「うん、ちょっとじゃなくてすごく気になった」
「俺はそっちのほうが嬉しいからむしろ話しかけてくれてありがとうだよ」

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