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12月14日 それは透明な想い【今日のものがたり】

 オフィスには小さめだけど立派なクリスマスツリーがある。かわいらしいオーナメントもついていて、すべて所長の伊出いでさんが用意したものだ。ハロウィンの頃はカボチャの置物や魔女のフィギュアがデスクに置かれていたり、七夕の頃は小さな笹をどこからか調達してきて短冊に願い事を書いたりもした。

(快眠、快食、快便)

 伊出さんの願い事を思い出して私は顔が少しニヤける。いや、書いてあることは確かに大事なことだけど。その3つが叶っているということは健康であることとイコールに近い。でも、単刀直入に短冊に書いていしまうところが伊出さんの素敵なところだと思う。そして伊出さんはその願い事はもう願わなくてもいいんじゃないかというくらい、叶っていると見ていて感じる。快便も……たぶん。

 12月は伊出さんの外でのお仕事が多くなる。今日も現場に直行という連絡があった。私はオフィスを見渡す。今日は私一人しかいない。といっても、多くても3人なのだ。伊出さんを含めて。しかも今、マネージャーの五十嵐いがらしさんは占い研修と語学学習を兼ねて海外にいる。予定ではクリスマス前に帰国予定なのだけど、どんな話が聞けるのか今からすごく楽しみにしている。

 私は伊出さんのことが好きだ。そして、五十嵐さんのことも好き。私はふたりが話しているときの空気感とか雰囲気がすごく好きで、このふたりと仕事ができるなんて幸せだと思っている。
 ふたりははっきり口にしていないけど、多分、もう夫婦だ。帰ってきたら籍を入れるんじゃないかとひっそり思っている。それを一番に祝福できたら私の七夕の願いが叶うことになる。私には恋人もいないけど、クリスマスも寂しくない、そんな気さえしている。

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