2月10日　文と封筒に……【今日のものがたり】

　お元気ですか？

　私は、この文（ふみ）をあなたが読んでくれると考えたら、元気になれます。
　なので、書いている今はぼちぼちといったところです。
　正直すぎるでしょうか。
　でも私は口でも紙の上でも嘘はつけないのです。いえ、つきたくないのです。だから、あなたにはいつも、本当のことだけを伝えています。
　
　こちらは毎日あわただしく、こうしてあなたへの文を書いているときだけが心落ち着ける時間になっています。いつまでもこうして手紙を書いていたい。いや、本当は文など書かなくても毎日あなたと会い、話し、笑いあっていたい。
　
　それが難しいことはわかっています。だから、文があって良かった。あのとき、ともに勉強し、文字を覚えることができて良かったと心から思っています。
　これからも時おりこうしてあなたへ文を送ります。再び会える日を夢見ながら、私は文を書き続けます。わがままかもしれないけれど、私を元気にさせて下さい。

　文を読むとあなたの声が重なる。優しく包み込むような声。
　私は今日もあなたの文を読んでいます。元気になれているでしょうか。
　あなたから届いた文を読む。内容は、もう随分前から同じもの。それでも私は読まずにはいられない。
　あなたが元気になるのなら、私は何度でも読みます。

　あなたからの文だと一目でわかる封筒にしまう。あなたと私だけが知っている秘密の印が刻まれている愛しい封筒に。

　でも、本当は私のわがままも聞いてほしい。
　私も、あなたが私の文を読んでくれたら元気になれるのです。
　私を元気にさせて下さい。
　だから私は、心を込めてこの一文から書き出します。

　お元気ですか？

　いつか、その言葉があなたに届きますように。