10月13日 豆を食べる【今日のものがたり】
いつもぼんやり眺めてしまいがちなんだけど、ぼんやりしててもぼんやり考えるんだよね。月って何か力があるのかなって。
なんだろう、そういう物語をよく読むからかな。でも、ということはやはり、月には力があるんだろうな。
太陽にも力はあると思うんだけど、それとは違う、静かで強い力が月にはあると思う。
だから、この世界のどこかにはその力を使って夜を生きている人がいるんだと思う。
ここまで読んで、“と思う”と書かれた部分を削って文章を変えたほうが納得できるなら、君は“弊社の仕事”に向いている。
水戸部景心は、就職面接を受けた会社からそういったメッセージをいただいて、僕なりの言葉で返信をした。1年近く前のことだ。
なぜそんなことを思い出したかというと、北山さんから“ゆでた豆”をもらったからだ。節分の日ではなく、今、豆なのは……
「陰暦の9月13日は十三夜で“豆名月”というゆでた豆を食べる風習があったんだ。この部署にとって月は大事だからね、僕たちもしっかり食べようじゃないか」
僕にメッセージを下さった、今では僕の上司である北山さんが豆をおいしそうに頬張る。
“月は大事だからね”
僕の仕事用の手帳には月の満ち欠けが記されている。北山さんの言う通り、僕たちの仕事は月と密接な関係にある。
窓から見える月を眺めながら僕も豆を食べる。おいしい。食べ終えたら仕事開始だ。
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