9月15日 スナックサンドを手に【今日のものがたり】
相川さんがヘアメイク研究部に参加してくれることが決まって私はウキウキしている。苦手な国語の時間すら楽しいと思えるくらいに。
けれど、2人ではどうしようもない。いや、相川さんと2人だけでもヘアメイクの話は楽しいのだけど、同好会として正式に歩み始めるにはあと3人必要。そう、新たな人材を求めて勧誘しなければならないのだ。
私は正直、誰彼かまわず声をかけるというのがとても苦手で、しかし声をかけなければ道は開けない。なんとか同じクラスから人材を確保したい。そして、女子だけでなく、男子の意見というのも取り入れたらおもしろいのではないかと相川さんと相談し、次なるターゲットは男子に決まったのだけど……みんななんだかんだで部活動に所属しているのである。
それと同好会を掛け持ち、となるとハードルは高くなる。私が所属している写真部みたいに活動日が週3日ぐらいの部活動だったらなんとかぎりセーフかな。
なんてことをスナックサンドを食べながらノートにメモしている私は、端から見たら怪しい人間かもしれない。でも、このスナックサンドは片手で持って食べられるし、ツナ&マヨはおいしいんだよ。
──待って、待って……スナックサンド……
なんだろ……いつだったか、見たことがあるような気がしてきた。クラスの誰かが食べてて……しかも一個じゃなくて三個くらい食べてて……。
──思い出した……五十嵐くんだ……!
そうだよ、三個も食べていたから気になったんだ。食べ終えて、まだ足りねーなーって話してて……同じ食べ物を食べたことがある、というのは話しかけるきっかけとしてはあり、だよね。
五十嵐くんのことは真正面からまじまじと見たことはないけど、横顔なら、ある。
私はスナックサンドを食べきって、ノートにメモする。
“五十嵐くんに声をかける!”
書くことで私は自分の背中を押しているのだ。
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