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4月13日 私は決闘するのだ【今日のものがたり】

「ぶ、ブラックで」

「かしこまりました」

 よし、第一関門は突破した。ついにわたしはデビューするのだ。
 商店街の一角にある紅茶屋さん。なのにわたしはコーヒーを頼み、さらにはブラックにするという暴挙に出た。
 いや、これは暴挙ではない。挑戦であり決闘である。私は正直、紅茶が大好きだ。しかし、常々コーヒーの存在が気になっていたのだ。コーヒーが飲める人は大人。そんなイメージが私の中から消えず、二十歳を超えた今でも残っているのだ。

 世間的には大人になっている私であるが、未だ、コーヒーを心底おいしいと思ったことはない。そう、実はこれまでもコーヒーに手を出してはいる。でもそれは世間一般ではカフェオレと呼ばれたりカフェラテと呼ばれたりしているものだ。しかもそこにシュガーを足している。
 しかし、ここのコーヒーは紅茶屋さんであるにも関わらず、なかなかおいしいと耳にした。コーヒー初心者にも良いと。それならば、いけるのではないか。そういう気持ちがむくむくとわき上がり、今に至ったのである。

「お待たせいたしました。コーヒーでございます」
「あ、ありがとうございます」

 き、きた……。私の目の前にコーヒーがある。ただよう香りがコーヒーであることを証明している。紅茶とは違う色。当然だ。ミルクもシュガーも入れていない、正真正銘のブラックコーヒー。

「い、いただきます」

 いつも飲み物を飲むときは口に出してそんなこと言わないのに、今日は思わず言ってしまった。

 では、いざゆかん。

 ごくん。

 ……。
 ……。
 ……。

 苦い。
 苦い。
 苦い。

 はぁ~今すぐこの上にバニラアイスを乗せてフロートにしたい……!
 私のブラックコーヒーとの決闘はしばしの間続きそうである。

※このあと本当に、お店のメニューにあるバニラアイスをトッピングしてきちんと飲み干しました。

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