10月5日 社内報の楽しみ【今日のものがたり】
「水戸部くん、はいこれ、今月の社内報」
「ありがとうございます」
僕の勤務する会社「日本空間研究所」は毎月社内報が配られる。社長さんのお言葉、各部署の活動報告、メディア掲載情報などなど、なかなかの文字量となっている。
そのなかでも僕が密かに楽しみにしているのが、今僕に社内報を渡して下さった上司の北山さんの上司である南川さんのコラムだ。
「水戸部くんは社内報をしっかり読んでくれるよね」
「あ、すみません。仕事中なのに」
「いやいや、かまわないよ。会社関連のものだし、僕だって仕事中に配っているからね」
楽しみだから、受け取るとすぐに確認してしまう。
今回のテーマは「映画」だった。最近公開された映画を南川さんの視点で解説している。見てみたくなる面白さだった。
(深景と姉さんもこれを楽しみにしてるんだよなぁ)
僕が南川さんを意識、というか気になるようになったきっかけは姉妹にある。
深景も姉さんも南川さんのファンなのだ。姉さんが編集をしている情報誌に載ったことがあり、それを見た深景がカッコいいと言い、それからちょいちょい南川さんの話が出るようになった。
しかも北山さんとは同い年で、オフィス内でも南川さんの話題が出ることもある。そういうときの北山さんはぶっきらぼうというか南川さんにぞんざいな感じがするのだけど、僕はそれを信頼の裏返しではないかと思っている。だって、それでいてどこか嬉しそうだから。
そういうわけで僕のまわりは南川さんファンが多く、となると、ぼくにとっても気になる存在になるのは自然な流れだよね。
そんなまわりの影響を差し引いても、南川さんと話したり、こうやってコラムを読んでいると、不思議な魅力と言ったら失礼かもしれないけど、南川さんのことをもっと知りたいな、なんて思ったりして自分でも少し驚いている。
そうだ、お昼休みに深景と姉さんに社内報受け取ったよって連絡しないと。
2人の嬉しそうな顔を想像して、僕は仕事へのやる気スイッチを入れる。
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