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儀礼・儀式は現代に必要?~ウポポイ渋谷公演 カムイとアイヌの物語「イノミ」を鑑賞して~

「え、この音は本当に人が奏でてる?」
公演後、一緒に鑑賞してた友人に思わず尋ねた。
素晴らしい発声技法は、耳と脳に気持ちよさをもたらした。

アニメ『ゴールデンカムイ』を観始めて、アイヌに興味を持った。もちろんストーリーはとんでもなく面白いのもあるが、わたしは精神的に豊かなアイヌ文化に心を惹かれていった。
『アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」』中川 裕 (著)を読み、子どもの名前のつけかたや『イオマンテ』と呼ばれる「飼い熊の霊送り儀礼」があることを知ってますます興味を持った。

▼名前のつけかた
先祖も含めて自分が知っている名前を子供につけない。同じ災いなどが降りかかってくるから。また、魂をとられないように子供にはうんこなどあえて汚い名前をつける
▼イオマンテ
・イオマンテは「動物の魂をカムイモシリ(神の国)へ送る」という意味で、広く動物神の霊送りの名称として使われる場合があるが、一般的には「飼い熊の霊送り儀礼」を指す言葉として知られている。
・親を殺して残った小熊を家に連れ帰って一年か2年か育てて、カムイモシリに送り返す。小熊を親元に送り返すことによって、くまたちがふたたび客として人間世界にやってくることを祈願する一大イベント

アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」

そのなかでも自分が自分なりの解釈でGISHIKIをしたことがあることからか(またどこかで書きます!)アイヌの伝統儀式や儀礼をいつか目の前でみてみたいと思うようになってきた。
そんなある日、伝統的な儀式が大都会の渋谷で観れるということが耳に入ってきた。

【公演情報】
ウポポイ渋谷公演カムイとアイヌの物語「イノミ」
第一部 特別講演「カムイとアイヌの物語」
第二部 伝統芸能上演「イノミ」
https://ainu-upopoy.jp/topics/inomi-shibuya2024/
■イノミとは
・アイヌはあらゆるものに魂が宿ると考え、人間にない力を持ったものすべてをカムイと呼び、敬虔な心をもって接してきました。カムイは彼らの世界では人間と同じ姿で暮らしており、人間の世界に遊びに訪れるときに、様々なものの姿になって現れます。イヨマンテ(熊の霊送り儀礼)は、そのカムイに感謝の祈りを捧げ、饗宴を催し、土産を持たせカムイの世界へ送る伝統的な儀礼です。「イノミ」は、イヨマンテの精神性を表現した舞台です。
https://ainu-upopoy.jp/topics/inomi-shibuya2024/

『カムイに感謝の祈りを捧げ、饗宴を催し、土産を持たせカムイの世界へ送る伝統的な儀礼』ということは理解しつつ、なぜ歌い踊る形式なのか疑問を持った。
現代に置き換えてみたら、祭りなどでは目にすることはありつつも当事者意識もなく「催し」として捉えしまっているところがある。その感覚が抜けないわたしは、「なぜ儀式をする必要があったのか、その効果はなにか」の視点で公演を鑑賞し始めていた。

・アイヌの踊りのほとんどは、女性が主役。歓迎の踊りも女性が多数を占める構成で、楽器はなく歌と手拍子によって行われる。全員で円を描いて回りながら、女性が掛け声でリズムを刻み、ときおり男性の勇壮な声が響く。

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しかし、公演の最中そんな思考も忘れるほど音とリズムに釘付けになり、終わるころには「儀式の目的」を考えること自体が現代の感覚なのかもしれないと思うようになった。
ただ祈りの心で歌い踊る、精神状態がある種のゾーンに入って大地と空とつながる感覚になるのではないか。ただ観て聞いているだけのわたしでも瞑想状態になったのだから、実際に円を囲みながら歌い踊るとなると通常の意識状態ではなくなりそうだ。

「ストレスには瞑想がいい」ということはよく耳にする。
座禅を組んで目をとじても考え事をしてしまうわたしには、歌い踊る儀式が合っているのかもしれない。


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