憧れとつくる未来
雨の音を聞いた日、あれからしばらくして、ナマケモノは手紙を書きました。
ニライカナイのオーナーと、文具を色々揃えてくれた梟さんに。
自分の気持ちや出来事を思い出して、いざ文章にすると、書く前に考える時間がたくさん必要でした。
だから、何枚も書き直して、ようやく2枚にまとめて、やっと先程郵便屋さんに出しに行きました。
色々な野菜が育っている畑の傍にある木陰で休んでいると、もくもく雲が育つように土が盛り上がってきました。
「おや、ここまで来たな。引き返すか…向きを変えるか…」
モグラは鼻だけ出してすぐさま潜ろうとします。
ナマケモノはモグラに会うのは久しぶりです。いつも塚は見るので、あぁ元気そうだなぁ、と思い、せっかくだからちょっと話がしたくて引き留めました。
「モグラさん、今の生活変えたいなぁ、なんて考えますか?憧れとか…そんなふうに、これが出来たらなぁ…とか、ありますか?」
モグラは答えてくれました。
「僕らは弱視、視力が弱いだけで太陽は好きさ、よく誤解されるけどね。
土の中で満足な生活さ。
長い時間かけて、地上より土の中の方が得意な身体になったんだ、それが僕らの憧れの生活、未来が、今なのかもと思ってる。
それに今更土から離れた生活は、お魚が陸に上がって生活する様なもんさ。」
時間があるなら農園で野菜を見ていきなさい、畑は元気だ。それを営むヒトが居てこそだが、ヒトだけでは成り立たない。
なるべく畑の方は掘らないようにしたいけど…なんだか土が元気だからか僕らの食べたい生き物達が元気で美味しい!なるべく気を付けて荒らさないようにしているんだけど…
モグラはもう声だけです。それでも土をボコっとさせてナマケモノに示してくれました。
ここにある野菜は、園長さんが慈しんで育てているものです。
のぶえんの園長さんは、植物として、野菜としてそれらを育てるだけでなく、カタチも色も楽しんでいました。
断面が星だったりします。
外側と内側で色が全く違ったりします。
どんなふうなら、野菜はイキイキ育つのかな、と園長さんは研究します。
野菜は食べてもらうまで、第一歩。
食べてもらって興味を持ってもらって、そこで「この野菜の良さをさらにアピール」するのも楽しいのです。
園長さんは食べる楽しみをいろんな方向へ拡げます。
苦い野菜は切る方向を変えてみるとか、鋭い刃物は野菜が斬られたことに気付かないとか。そんな無さそうであり得そうな事も実践してみます。
料理の得意な人に、作って貰うのも一つの方法です。
食べれなくても見ているうちに気になってくるかもしれません。
野菜がイキイキ、キラキラしていたら?
美味しいって見た目で伝わる?
園長さんは食べるにこだわらず、お花を飾る様に野菜のスライスを飾りました。子供にも大人にも、まずは「これなぁに?」と言われたら嬉しそうな顔をします。
遠くに居るのに、園長さんは太陽のような明るさです。
「自分の大好きを、人に伝える人は、あんなにキラキラして見えるんだね。僕にも園長さんの気持ちが伝わってくるくらいだもの。」
ナマケモノはほっこりした気持ちで、今日は野菜をゆっくりたくさん煮込んで、美味しいスープにしようと思いました。
そして、モグラが言った「いつかの、憧れた未来が、今の生活」についてもお野菜を煮ながらゆっくり焦らず考えてみようと思いました。
園長さんのように毎日少しずつ、野菜の育つ土を元気にするように、ナマケモノの身体も作っていこうと考えました。
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