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タネが見た夢

 ねえ 
 ねえ、キミ。
 キミ、道に迷ってるの?
 それとも旅の途中でここにいるの?
 だってさ、キミ、そらのたねだろう?ぼんやりしていると、消えちゃうよ、見失うよ。

 なにそれ、って聞かれても…。
 んー。いま、わからない、ってことは、今まだ、途中なんじゃないかな、ってことしか僕にもわからない。
 
 人間は力を持ってて強くて、まぁ、ちょっと乱暴な部分もあるからさ、人間の近くに居るにもちょっとコツがいるよね。脆い部分もあるから、その部分を隠したり誤魔化したりもして、なんだかおかしな事もあるし。でも爪も牙も、備え付けるのをやめてるから、関係を築いたりするのに時間がかかるんだよね。
 だけど、この先、そんな事もあったんだよー、なんて笑って話す日が来る。
 人間の身体のうちは色々大変だよね。
 
 だからたまぁに猫の姿で現世におりたってしまうんだ。だって、ここで一度でも優しい人に撫でてもらえたら、すごく勇気や元気や幸せを貰える。生まれてよかったなって。人の手は不思議。だから何度か行ったり来たりしてるんだけど…。
 あっ。
 これ、猫の特権なんだ、僕等の内緒話にしてね。
 "僕は猫じゃない"?
 本当の自分は違うって?
 ふふふっ。
 まぁ、自分の姿なんてよくわからないよね。
 だけども、そらのたねの誇りを持って!いつか会うほかのタネたちに、言われるよ。
 迷子の仔猫ちゃん、
 いまのキミは、優しさなら知っているだろう?
 優しい、は、種になりやすいからね。
 
 淡いヒカリを纏う猫は、さらに上の枝に飛び移ってぐいーっと伸びてから、尾をスッと身体に沿わせてとても優雅にお座りになった。

 誰かに親切にされてポカポカした気持ちになったことも、キミが誰かに親切にして、ありがとう、って笑ってもらったこともあるだろう?
 お互い、あげたりもらったりしてる。
 誰もが絶対体験しているはずなんだ。
 
 だから優しいは結構わかりやすい。

 寝て起きて、今のなんだっけ?って時と似てるのが、愛。猫みたいにぐにゃーん、てなるのが愛。

 よくわからない?

 あやふやで、掴めない、そういうものに無理にカタチや色や音や匂いや、名前を付けようとすると、かえって解らなくなるものなのさ。

 あったかくて、優しくてさ…それからちょびっと、…スパルタなんだ、ピリッとね。

 大丈夫だから。
 信じて進んで!
 
 

 
 

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