白杖を持つのに勇気が必要だった

今では白杖を堂々と持ってあるいているけど、
持つようになったのはここ2年くらい。

夜盲、視野狭窄ではあったけど、昼間なら自分が見えている「普通」の状態で慣れたところは歩けていたし、商業施設の中もある程度見えていたから買い物もできたし。
ただ、「何かあった時のために」白杖は折りたたんで持ち歩いていたけど、
日常的に使うということはなかったのです。

だんだん、私の「普通」は請願者の方に比べて全然見えていないということを実感していきます。

道を歩いていて、お互いぶつかった(と思う)のに、
おじょうさま風の女性に
「いったあい1!! ちゃんと前見て歩いてんのー?」
と大きな声で怒られた。

地下鉄のホームで、やっと歩けるくらいの子どもに足がひっかかって転ばせて泣かせてしまった。
空のベビーカーのそばの若いママがに「ちゃんと前見て歩いてください!!」とにらまれて怒られた。

お互い歩いてたよね?

駅のホームで子どもを走らせて遊ばせてるのもどうなの?

といろいろ思うんだけど、
こっちがまともに見えていない、という負い目があるから、
すみません、って謝るしかなくて、
なんだか悔しくて泣けてきて。

見えなくなってきていることを認める
ということを、きちんと自分で納得して受け入れなきゃいけないなと思った。

誰も自分を知らないところでは、白杖を使うことに抵抗がなくても、
会社の人の前で、友だちの前で、近所で、
白杖を使う決心がつかなかったけど

白杖を持っていたら、怒られることもなかったかもしれなくて、
こちらの状況もわかってもらえて
危なくてこちらが気付かない時は、相手がよけてくれるんじゃないかって

自分の心を守るために白杖を持つことにした。

歩行訓練も受け始めて、
街の中を歩くと、
一人で歩いていると、階段のところや、
場所に迷っていると、声をかけていただけることが多くなって、
そのたびにあたたかい気持ちになることが増えて。

ここ1年で、明るすぎてもまぶしくて見えなくて
白杖なしでは歩けなくなってきて。

弱視なので、スマホも見るし、
ある程度の障害物や向こうから来てぶつかりそうになる人は避けられるから
見る人が見れば、
「見えてんじゃん」って思うんだろうなあ。

以前は私も
白杖=全盲
と思っていたから、そう思う人が多いだろうと思っている。

見え方は、本当、いろいろなんだよね。

視覚障害を持つ人の集まりに時々参加するようになり、
病名はついているけど、自分はまだ見えているから白杖は持たない、
という方も少なくないようで。

持たない、のか、持ちたくない、のか。
持つ、ということになかなか踏み入れない気持ち、分かる。
まだ持つことをしていない方がみんなそうだとは限らないけど、

私は、白杖を持つ、ということに
勇気が必要でした。

会社には私の視覚障害の状況を伝えていたので、
同僚と同じように動けないことが多々あり、
「白杖持てばいいじゃん」って、心配してくれてるのだとは思うけど、
軽く言われることが悲しかったし傷ついたし。

結果、自分の経験でいろいろ傷ついてきて
決心がついたのだけど。

なんかね、
勇気、だったんだよね。
koharu



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?