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Kindleで出版して夢の印税生活!

Kindleで出版して夢の印税生活!

こんな事にいちいち突っ込みを入れるほうが野暮と言う気もしますが、それでも気になったので記載します。

Kindleで出版してお金を稼ぐ?

ネット上で「Kindle 出版」などと検索すると、件名に記載したようなタイトルが大量に出てきます。

こうしたサイトの論調は大まかに以下になります。

  • 個人で電子書籍を出版できる。

  • 書店で並ぶ場合、印税率は5~10%と言われるが、Kindleの場合70%。

  • Kindle には定額読み放題サービスのKindle Unlimitedがあり読者に読まれやすい。

  • 1冊書くのは大変だが、電子書籍に適した文字数は1~2万文字程度。これならそこまで難しくなく書くことが可能。

Kindleには個人出版するKindle Direct Publishingという仕組みがあり、確かに個人でも出版ができます。

Kindleで出版時のお金の付け方

今回は出版する本の種別を小説として考えてみます。

Kindleについて、読者側の視点で立った時、本の購入方法は「購入」と「Kindle Unlimited
」の2種類あります。

購入された場合はKindle専売の場合70%著者に支払われます。定価が2000円の本は1400円著者に支払われます。一般的な印税率の相場は5~10%と比較して、とても魅力的な金額設定だと思います。

ただ、Kindle Unlimitedとして読まれた場合、話が変わってきます。
さて、ここで問題です。
200ページある、定価が2000円の本がKindle Unlimitedとして読まれたら幾らでしょう?

答えは約80~100円です。
Kindle Unlimited の場合、(月によって多少レートは変わりますが)1ページ当たり0.4~0.5円になります。
これは定額がいくらか、と言ったことは何も関係がありません。
あくまでページごとです。

出版物を購入してもらうために

個人で出版した場合も、書店に並んでいるような本と勝負して購入してもらう必要があります。
あなた自身に置き換えて考えてほしいのですが、どこの誰が書いたかもわからないような本に対して2000円も出しますか?
ちなみに70%を得る場合の最低価格は250円です。1冊売れると170円くらいになります。

これで生活しようとした場合、月の収入として20万円程度は欲しいと思います。もし最低金額の250円で売ったとすると毎月1200冊買ってもらう必要があります。毎月です。

この毎月1200冊という数字がどのくらいかと言うと、以下が参考になると思います。

ヒット作は出版社の規模や本の種類によっても目安が変わってきます。

小規模の出版社で初版2000〜3000部程度、大規模な出版社では5000〜10000部程度を用意するのが一般的です。出版社は初版が完売した場合に利益が出るように販売価格を決定しているため、初版が完売して追加で出版する重版が決まると、さらに利益が出ます。そのため、重版が決まった書籍をヒット作と呼ぶことが多いようです。

https://fueisha.com/knowledgeonline/bestseller

初版5000部でヒット作という事です。4カ月でヒット作と呼ばれる本以上を売り、そのまま継続する必要があるというわけです。

本の単価を上げればいいかもしれません。
ただ、例えば600円と言った金額に設定すると、一般的な名作と呼ばれる小説を購入できる金額になります。
そういった名作と肩を並べて購入するというのは、こちらもなかなか難しいと思います。

Kindle Unlimitedで稼ぐ

それではKindle Unlimitedではどうでしょうか。
定額のサービスなので知らない作者であっても「とりあえずお試しで読んでみるか」という事は起こりえます。

Kinlde Unlimitedが1ページ当たり0.4~0.5円と言うのは先ほど記載した通りです。
では、この1ページは何文字でしょう。
47,324文字で97ページ
86,945文字で168ページ

とのことです。

大体5万文字の小説を書いて100ページ、1冊読まれると40円~50円です。
ちなみに書店に売っている一般的な小説で10万文字と言われます。
あの量の小説を書いて200ページ、80~100円です。

よく「誰でも作れる!」といって記載されている文章量は1万~2万文字とされていますが、2万文字の場合、多めに見積もって50ページ。これでは1冊読まれても25円にしかなりません。

仮に簡単と言われる2万文字で考えてみましょう。
この2万文字の短編小説を書くのにどの程度の時間がかかるでしょうか。

小説を書くには筋書き(プロット)が必要です。
【3時間】くらいは欲しいところでしょうか

そこから実際に小説を書く作業が始まります。
1時間に書ける文字数は個人差があると思います。
ワープロ検定で、10分当たり一番難しい1級で700文字以上、一番簡単な4球で200文字以上とのことです。
https://www.goukaku.ne.jp/test_wordpro.html

1時間あたりに修正すると1200文字~4200文字という事になります。
ただ、これは「決められた文章を入力する速度」です。実際に小説を考えながら、文章の構成やセリフ、地の文などを書く場合これよりも間違いなく速度は落ちるでしょう。
また、初めて書く人であればもっと遅くなるはずです。
仮にワープロ検定の一番遅い人の1時間当たり1200文字として、2万文字書くためには【17時間】かかります。

書き終わったら校正を行って修正をします。
誤字脱字や、はじめの頃と不自然に口調が変わっていたりすることもあるでしょう。
これも全部の文章を読みながら修正していくため【4時間】必要という事にします。

本を出版するためには表紙が必要です。
イラストなのか、文字なのかわからないですがここでも【2時間】くらいかかると思います。

そして、申請する際の本の紹介文(要約)の作成も必要です。ここは【1時間】という事にしましょうか。

さて、ここまでの時間を合計すると、単純計算で27時間かかります。
機械のように淡々と行い、休憩時間もなしでの計算です。
また、初めて行う内容なので、バッファも多めにとっておいた方がよいでしょう。小説の筆が止まることもあります。PMBOK的にも25~50%くらいとっておいた方が良いので、余裕をもって50%取ります。
バッファで13時間なので1冊出版するのに40時間かかります。
順調に実施することが出来て40時間です。

ここに記載した以外にもさまざま作業が発生します。まず出版するためのKindle Direct Publishingのアカウントが無ければ作る必要がありますし、入金されるための講座登録も必要です。
小説の文章を書くスピードを1時間あたり1200文字の計算で書きましたが、これも初めて書く人にとっては机上の空論でしょう。順調に書き進めることが出来るセクションでは1時間あたり2000文字くらいは書けますが、やはり迷ったり筆が進まないタイミングだったりは来ます。

そして、順調にいったとして、40時間かけて作成した作品が1回読まれると25円です。

現在最低賃金は大抵1000円を超えます。深夜や場所によっては1500円を超えます。
1000円だとしても、40時間バイトで働けば4万円。
作成した小説をKindle Unlimitedで読んでもらい、4万円稼ぐためには1600人に読んでもらう必要があります。
先ほどのヒット作程度には読んでもらわないと4万円稼げません。

ネット上の情報のよくある誤解

また、よく「出版した書籍はフロー所得ではなくストック所得、資産になります。今月出版したら来月も、再来月も、ずっとお金が発生し続けます」という謳い文句を見ます。

ただ、これは間違ってはいないですが、正しくもありません。
新発売の月が100冊売れたからと言って、1年後同じように100冊売れることはまずありません。
購入してもらうためにはそもそもKindleの検索で表示されないと購入してもらえません。
一番売れるのは「新発売」とタグが付いた時です。過去作が売れるのは続編が出たときくらいのもので、売り上げはすぐに鈍化します。
おすすめとして表示されることもありますが、それも「売れた」作品が多いでしょうし、ほかの作品も次々に登録されていくため、どんどん表示順位は下がっていきます。
そうすると当然売り上げは下がっていきます。

他のところ、例えばSNSで効果的に宣伝する必要がありますが、ほかの人もそういったことは行っているので、新しく始めた人がSNSで目立って宣伝効果を得るためには相当上手に行わなければなりませんし、当然時間もかかります。

確かに販売はされ続けますし、継続的に売り上げが上がる可能性はありますが、あくまで可能性ということを把握する必要があります。

ChatGPTに書いてもらいましょう

最近はこういったブログも目立つようになりました。
確かに生成AIは素晴らしい技術ですし、文章も書いてはくれます。ただ、それで破綻せずに楽しめる文章が書けるかというとまた別問題です。

「ChatGPTで簡単に書ける」と言っている人は10万文字の書籍とまでは言いませんが、2万文字くらいの小説を書きあげてみてほしいです。
プロット作成の手伝いもしてくれます。登場人物の名前も考えてくれるでしょう。文章作成の手伝いもしてくれるでしょう。確かに効率は上がります。
だからと言って今まで40時間かけて作成していた本がいきなり10分で作れるといった事は現状ないと思っています。

そして、そうして一生懸命作成しても、売り上げは1冊25円しか入らないという事実は変わりません。

ネットで毎月20万円稼いでる!みたいな人を見るよ?

以前はAIグラビアで稼げることはあったようですが、現在は似たようなコンテンツが増えすぎたからかKindle側でそういったコンテンツはブロックされています。
まぁ、読者側からしたら似たようなものばかり延々と並ぶ状況はいい体験とは言えないので対策としては当然の気もします。

また、確かに個人出版で稼いでいる人もいます。
私が知っているなかで一番有名なのはぬこー様ちゃんでしょうか。
https://note.com/creatorecolab/n/n8561b048132e

インディーズ漫画という無料の漫画を出して、読まれた分だけ報酬が入ってくるという仕組み。10万DLで100万円くらい入ってくるとのことです。夢のある話ですね。
でもやはり10万DLされる必要があるんですよ。当たり前ですが、前提として何かしらの能力がないと達成できません。

このインディーズ漫画界隈にはプロ・元プロ(このぬこー様ちゃんももともとは商業雑誌で連載を持っています。面白いです)がゴロゴロしのぎを削っています。

確かに「よし!まだ何も能力がないけど一発逆転するぞ!」という可能性は0ではないですが、なかなか確率は低いのかなと思いますがいかがでしょうか。

まとめ

こういった「●●すれば簡単にお金が稼げる!」というインプレッション稼ぎのブログが増えすぎて辟易としているのでつい長くなってしまいました。

別にKinlde Direct Publishingという仕組みを批判するわけではありません。
他のサイトは5000円以上にならないと換金できないなどといった制限がある中、Kindle Direct Publishingは1円でも売り上げが立てば入金されます。
「1冊読まれたら25円みたいな世界でもそれでも創作物でお金をもらってみたい」という方にはとても良い仕組みだと思います!

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