琥珀あめ

ふたりの夫とのんびり暮らしています。

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最近の記事

【ふたりの夫】アキとわたし

「ステージ近いですね」 わたしに向けられたその言葉を聞きとれず「えっ?」と聞き返すと、アキはもう一度「ステージ、近いですね」と繰り返した。らしい。 アキの記憶には鮮明に残っているというそのやりとりを、残念なことにわたしはあまり覚えていない。 その場面を誰かが録画していてくれたらよかったのに、と思うけれど、そんなことはあり得ないので、わたしはアキに何度もせがんで思い出話をしてもらう。 わたしとアキには、観劇という共通の趣味がある。 あるときアキが“開演時間までの暇つぶし”

    • 【ふたりの夫】フユとわたし

      フユと出逢ったのは、ある年の夏の始まり頃。 第一印象は「コドモみたいな人」だった。良くないほうの意味で、稚さを感じた。(とはいえ悪事を働いていたわけではない) 屈託のない笑顔だな、とも思った。 今気づいたけれど、その笑顔は良い意味で幼く、つまり良くも悪くも「コドモみたいな人」だとあのときの私は思ったのだった。 一方フユはわたしを初めて見たときから「かわいい」と思い、つまりは「ひとめぼれだった」そうだ。 わたしは自分の顔のいくつもの欠点を自覚しているので少し驚いたけれど、

      • 【ふたりの夫】会話する、ということ。

        わたしたち3人は、日常的によく会話をする。 そのことについて「ふぅん」と思うか、驚くか、反応は人それぞれで、その反応の違いによってわたしは、世の中にはいろんな家族や夫婦がいるのだとつくづく思う。 「ふぅん」という反応をする人は、同じように家族内でよく会話をする人なのだろう。「まぁ、同年代が3人いれば話す相手には困らないだろうね」と言う人もいた。 驚く人からはたいてい「よくそんなに話すことがあるね」と言われる。追加で「アキとフユは普段は口数が少ないのにね」と言われることも

        • 【ふたりの夫】はじめに

          わたしには夫がふたりいる。 婚姻届が受理された夫と、受理されていない夫。 ややこしいので便宜上ここでは、受理されたほうの夫を「フユ」受理されていないほうを「アキ」と呼ぶことにする。 そしてわたしはふたりから「コハク」と呼ばれている。 わたしたち3人の関係は“一般的”ではないし、他者に説明すると驚かれたり困惑されたりするけれど(そしてそれは自然な反応だと思うけれど)、当人たちからすると至ってシンプルな関係だ。 わたしはフユのこともアキのことも同じくらい(そもそも比較の仕様

        【ふたりの夫】アキとわたし