フィゥー
人がごった返している駅をその外側にあるカフェのカウンターから窓越しに眺めていた。
どうしてこんなに人が多いのか。
どうして全員が同じ時間に同じように行動するのか。
私は冷めた目で駅から忙しく出て行く人や入って行く人を眺め続ける。
ごちゃごちゃと動き回る人々を見て思う。
ヒト、多すぎない?
と。
どんな動物でも増えすぎたら勝手に数が減っていくのが自然界の通りだったと思うのだが、これはヒトには当てはまらないのだろうか。
いや、もしかすると当てはまるのかもしれないがヒトはまだその数に達していないということなのかもしれない。
こんなにたくさん駅に人がいても、まだ足りないのかなどと頭の片隅で考えてうんざりとした。
ため息の代わりにコーヒーを一口。
そしてまた考える。
たとえば、捕食者がいなくなった島で大量に増殖していく鹿。
最初は食料も豊富で順調にその数を増やし続ける。
でもその数が一定以上になると食料はなくなり、今度は勝手に数が減っていく。
自然と丁度良い数まで減る。
もしくは丁度良い数まで減ることができず、全滅。
たしかそんな感じだったよなあと、大学で受けた講義の内容を思い出す。
その理論でいくとヒトだって、勝手に数が減るか全滅していくのが自然なのだ。
でもヒトは……と考えが先程と同じところを回るのを感じて思考を止める。
手元のコーヒーに視線を移す。
紙コップに接している部分の色は薄茶なのに全体的には真っ黒だ。
本来はきっと薄茶色なのだろうけれど、密集すると黒になる。
本来の色からは遠くなる。
違う色に見えてしまう。
もし宇宙人がいるとして今の地球を観察していたとしたならば、彼等にはヒトがどう映っているのだろう。
もしかしたら、この手元のコーヒーのように外側だけ違う色で見えて全体的には真っ黒に見えているのかもしれない。
コーヒーを呷ると、思った以上に量が減ってしまい、残り一口になってしまった。
いや、もしかしたら一口と言っていい量じゃないかもしれない。
そのせいか、紙コップの中のコーヒーの色は全体的に薄茶だ。
ヒトも一定数まで減れば、宇宙人からも違う色に見えるのかもしれないと考える。
もう一度外に目を移す。
そこには先程と変わらずたくさんの人が駅に出入りしていた。
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