フォアシィー
彼は青い花を赤く色づけていた。
誰かがそれはおかしいよと指摘をする。
しかし彼は何がおかしいのかがわからなかったので、不思議そうに指摘した子のことを見つめていた。
指摘した子は色が違うよ、と再度彼に言う。
聞こえていなかったのだと思ったからだ。
彼は、それでも言われた言葉の意味が理解出来なくて、その子を見つめるだけだった。
何の反応も示さない彼に、指摘した子は苛立ちを覚えて大人にそれを告げに行く。
彼はその子が立ち去ったので、何事もなかったかのようにまた花を赤く色づけ続けた。
しばらくすると指摘した子が、大人を連れて彼のもとへ戻って来た。
そして彼の絵を指さして、おかしいですと彼の目の前で大人に言う。
大人は確かに彼の色付けはおかしいと、指摘した子に同調する。
それでも彼はやはり色を付け直そうとはしなかった。
そればかりか、一緒に描いていた草木の緑色の部分すら赤く色づけし始める。
指摘した子も同調した大人も気味が悪くなり、彼から画用紙も筆も絵の具も全て取り上げた。
彼は少し不満そうな顔をしたけれど、タイミングよく区切りのチャイムが鳴ったので彼はさっさとハウスに戻ってしまう。
大人は指摘した子にも戻るように告げると、彼の描いた絵と用具を全て片付ける。
しかし大人は彼の描いた絵だけは片づけず、自分のより上の人物に手渡していた。
もしこの絵の通りに色づいたとしたら、彼はやはり……
可能性は高まるが確定ではない
不用心に話すべきことでもない、君は沈黙していればいい
上の人物は話し相手に顔も向けず、目も合わせず冷たく言った。
大人は失礼致しましたとだけ述べて、そこを去る。
残る人物は、難しそうに眉間にしわを寄せていた。
数日後、彼の描いた花の場所で殺人事件が起きた。
第一発見者は、彼に色の指摘をした子だ。
その子は現場の様子をみて二度驚いた。
ひとつめは、被害者と呼ぶべき人物の損傷具合に。
もうひとつは、被害者の血で辺りの草花が赤色に染まっていることだった。
その付近の草花は数日前、彼が色づけたものと同じになっていた。
青い花は赤く、緑の草木も赤く染まっていた。
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