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春の庭に誘われて

春の庭は、命が大忙しだ。
ハチが飛び回り、鳥がさえずり、心地よい音は幾重にも重なり、やがて音楽になる。


朝つぼみだった花が、午後には咲いていたりする。
時間の流れ方が違う。


あっという間に満開になって散って、次の花に移り変わる。
春の雨上がりの植物は、5倍速くらいの早回しで成長しているみたいだ。


一年に一度しか咲かない花を、見逃さないようにするのに毎日忙しい。
ぼんやり家にこもっていたりしたら、会えるのはまた来年。

あっという間に去っていってしまうのは、何も桜だけじゃない。
名もなき花も、ひっそりとピークを迎えて、ささやかなお披露目をすると、あっという間に去っていく。
また来年会えるとも限らない。


そうなると、うっかり外に出てしまう。
春の庭に誘われる。


もうみんな死んだと思っていたメダカの鉢に、キラッと泳ぐ姿を窓から見つけた時、心が動いて、思わず変な格好のまま庭に飛び出していた。


「春だよ」と、あちこちから声がする。

なぜだろう。
天国へ行ったあの子達も、春には庭にいるような気がしてくるのだ。

春は再会の季節だ。




冬から


春へ

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