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動物は、強いものが残る。植物は、変化できるものが残る。人間は?(エッセイ・ペットロスガーデン③)

マイガーデンには、ビオトープコーナーが出来、さらに充実している。
睡蓮を育ててみたかったのだが、鉢にボウフラが湧くそうなので、対策にメダカを一緒に飼うことにした。

メダカを飼うのは初めてではないけれど、昔、よくわからないまま室内の金魚鉢で飼育し、結局長生きできなかった。
あれから、15年。私も少しは成長し、焦らずに、地道な方法を選ぶようになり、実家のメダカを分けてもらうにあたり、1週間かけて水を作ることにした。
バクテリアがうまく住むと、水草だけで光合成が行われ、酸素も入れず屋外で飼うことができるらしい。まずは実家から、深さ60センチほどの大きな鉢をもらい、午前だけ太陽が当たる場所を選ぶ。赤玉土を底に入れて、レンガで睡蓮の高さを調整。水草を浮かべて、水質が整うのを待つ。

満を持して、実家からもらった黒メダカを4匹と、オレンジのメダカを3匹投入。入れた傍から、鉢に発生していたボウフラを勢いよく食べ、すんなりと環境に馴染んだようで、ほっとする。
7匹の内、4匹がメスだったようで、数日後にはお腹に卵を付けていた。どう見ても順調だ。準備した環境を気に入ってくれたらしい。
どこからか発生したタニシもコケを食べてくれるので、相性がよさそうだ。
水質が安定した証と言われる、追いかけっこも始まったけれど、鉢が深いので、追いかけられるメダカも隠れることができるようで、いつも鉢の底のほうにいる。

彼らを喜ばせたくて、普通の餌の他、乾燥ミジンコも買う。ミジンコは乾燥した上に大きいので、くわえて何度か水中に潜らせて、ふやかしながら食べている。子メダカ用の細かいエサも買って、3種類を使い分ける。
欲が出て、ペットショップで、さらに3匹を購入した。一匹百円の、丈夫そうで珍しくないメダカを選ぶ。
いきなり大鉢に入れては、もし病気を持っていた場合に全滅しそうであるし、そもそも川出身のメダカとは性格が合わなそうだと、住みかを分ける。花模様が付いた、3匹にはたっぷり広い、都会風おしゃれ鉢に入れた。
川出身の7匹が、私が覗き込んだだけで寄って来るのに対し、ペットショップのメダカは警戒心が強い。いつも3匹で固まって、水草に隠れている。
しかし、3日ほど経った頃、見つからないようにカーテンの隙間から覗いていると、ひなたぼっこをしてリラックスしていた。初めての雨も、固まりながら乗り越えて、外の暮らしにも少しずつ慣れてきたらしい。こちらのメダカも、お腹に卵を付けるようになった。

しかし、2週間ほどした頃、小さなオスメダカへのいじめが始まった。3匹であんなに寄り添っていたのに、夫婦2匹で1匹をいじめ始めたのだ。水質の安定である。
追いかけられているメダカは、なんだか身体が曲がっているようだし、弱るのが心配だ。ネットで対策を調べ、隠れ場所になる水草を増やしたり、エサを別にしたりと工夫をする。それでも執拗に追いかけられる、小さめなオスメダカ。夫婦2匹が憎らしくなる。いじめは嫌いだ。それにこのいじめ、縄張り意識の強いメダカの特性らしく、いじめられたメダカを他に移しても、今度は別のメダカにターゲットが移るらしい(次は夫婦でやりあうのか?)。
子メダカ用に分けた3つ目の水槽でも、よく見ると、生まれて数日の子メダカが、自分より小さなメダカを追い回している。メダカは性格が悪かったのだとがっかりする。(60センチの大鉢では、住みわけがしやすいようで、いじめは目立たない)。
以前、知り合いがメダカを飼い、いじめられるメダカがかわいそうなんだ、と、エサを集中的にやっていたことを思い出す。どうも人間は、弱いものを助けたくなる本能があるらしい。それは、人間だけに備わった感情なのだろうか。
動物の世界では、強いものが生き残ることが常識だ。弱者を守ろうとする気持ちは、人間だけが持つ、心の奥に、刻み込まれた使命のようなものなのだろうか。

そんな今日、グーグルニュースに、ラブラドールレトリバーが、湖で溺れた小鹿を泳いで岸まで誘導し、陸に押し上げ、その上濡れた体を舐めてあげたという美しい話が出ていた。しかも、そこで話は終わらず、小鹿はなんと後日、母鹿と一緒に、お礼を言いにラブラドールレトリバーを訪ねてきたというではないか!そんな、世界のびっくりニュースを読みながら、滅多にないことだよなぁ、でもたまにはあるんだろうな、その動物たちは魂が高くて、次は人間に生まれ変わるのかしら、などと考えていたら、あることを思いだした。
今は亡き実家の雑種犬、しーちゃんは若かった頃、私に会うと、その喜びのあまり、手をガブガブ甘噛みしてきていたのだけれど、ある日度が過ぎてしまったことがあった。「痛い、痛い!!」と私が声を上げたら、なんと大人しい、なこ(今は天国組の私の愛犬・パグ)が、ジャンプしてしーちゃんの首に、下からかぷっと噛みついたのだった。なこは愛玩犬、しーちゃんは猟犬系の大きな雑種だ。怒ったこともない、ましてや誰かを噛むなんてありえなかったなこが、私を守る為に、生涯で1回だけやった攻撃だった。全く効いてなかったけど。
守ってくれてありがとう、なこさん。嬉しい思い出です。
弱いものを守るのは、人間だけではありません。
というわけで、もうしばらくメダカのいじめ対策、がんばってみます。
 

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